Happy,Happy

2006/06/06



 来年の誕生日も、共に過ごせたらいいなと頭の上から声が降ってくる。
 日付は変わったばかりだというのに気の早いことだ、とユウはその声の方向を見上げた。
「今年こうやって過ごせただけで感謝しておけ」
「や、それはもちろん、幸せなんだけどさ」
 来年もこうやって、いちばんに、いちばん近くでおめでとうと言ってみたい。
 ラビはユウの髪を撫でながら、日常と化した任務を些か恨めしく思った。恋人に逢うのも困難で、共にゆっくり過ごすなんてこと、とても難しくて。でもその任務は、恋しい人と過ごす世界のためにはどうしても必要なもので。
「早く世界が平和になればいいのに」
 そうしたら誕生日は毎年一緒に過ごして、朝から晩まで馬鹿みたいにはしゃいで、いい加減にしろとユウに怒られるんだ、と楽しそうに口にする。
 仕方のないヤツだ、とため息をつきながらも、実は神田の方こそそんな世界も夢見てる。
 戦いの、任務のない世界はどんなに退屈で、どれだけ変化をもたらして、そしてどれほど幸せだろうかと。
「毎年、ユウの誕生日祝って感謝したいんさ」
 触れ合う体温はもう慣れてしまったけれど、戦いのない世界でもこの体温は変わらないだろうかと。
 抱いてくる腕に素直に身を預けてユウは、そっと呟く。
「同じ言葉、返してやる」
 この世に生誕したことを感謝して、祝ってやりたいのはこちらも同じ。
「来年の俺の誕生日の前に、てめェの誕生日だな」
 共に過ごせることを祈ろう。せめて二人ともが、この地に生きていることを。
「んな嬉しいこと言われたら、加減できないんですけどユウちゃん」
 すでに加減をする気などないくせに、と首から引き寄せ誘い、触れる吐息を楽しんだ。
 首筋を這う口唇が、胸を手のひらが、温かくて心地よい。
「ラビ…」
 快楽を絶える合間に名を呼ぶと、嬉しそうに笑う顔が目に入る。名を呼ばれるのはとても幸福だと。
「んっ、……ぁ」
 幸福と情熱を引き連れて、愛しい人に触れる。
 硬く咲く胸の突起を、梵字と一緒になぞり嬲れば、神田の身体は快楽に跳ねた。この身体をこんなに敏感にしてしまったのは確かにラビの所業だが、生まれついての素質なのかそれともそれを超える愛情であるのか、当の神田にさえ解からないだろう。
 後者だと、思いたい。
「っつ……ぁ、ん」
 先ほどまでの行為の余韻が、快楽を引き戻す。ゆっくりと、焦らすような丁寧さは、逆に毒のようにさえ思えてしまう。
「ン……、んぁっ…」
 舌先が胸の突起を掠め、びくりと腰が沈んだ。舌の上で転がされ、喉を突く快楽を、もうどうにも仕様がない。ギシリと啼いたスプリングは、ユウの意識を現実に引き止める。
 口内に含まれて、熱が下腹部に集中していく。
「あ、あっ……やめ…!」
 両方の朱を舌と指で弄られ、ぎゅうとシーツに縋った。
「ん、んん、ぁん…っ!」
 脚の間で震えだしたそれにラビが気がつかないわけはなく、何の前触れもなく握りこまれて戦慄く。
「…っ、馬鹿っ……急にンなとこ触んな…っ」
「だってユウ、ここ触って欲しくてビクビクしてたさ」
 笑い混じりの囁きに、カァッと熱が上がる。手のひらに包み込まれたそれは、確かに愛撫を求めていた様ではあるけれど。
「今日は誕生日だし、ユウの気持ちいいようにしてあげるさ」
 タチの悪い笑顔だ、と独りごちる。
「どうして欲しい? ユウ」
 ラビがそう続けるであろうことも、どれだけか想像できた。
 だけど、いやだからこそ、このまま手中に堕ちてしまうのは気に食わない。
「ラビ……」
「ん、何、ユウ?」
 引き寄せてひとつ、ちいさな口づけ。それだけでも驚いた顔はしてくれたが。



「……────朝まで、離すな」



 案の定、惚けたようなラビの顔。
「…………ユウちゃん…言うようになったさ…」
 噛み付くような口づけに、肩を竦めて笑う。
 そうだせめてこれくらいの報復は。