★★★Happy?

2005/01/25



 周りには闇しかなかった。
 右も左も上も下も、遠慮のない深い闇で、自分はずっとそこにいた。






「ユウ?」
 口づけをした後で、不思議そうな声を上げるラビ。
 嬉しそうに、でも不思議そうに。
 自分の方から口づけることは珍しい。
「どした?」
 目を開けてじっと見つめてみた。
 おぼろげなライトに透けるオレンジ色の髪。
 開かれていたら美しいだろう右目にかかる黒の眼帯。
 耳を貫くピアスを弾き、それを擁する耳朶をペロリと舐める。
「…っユ…?」
「…────抱けよ、ラビ」
 感じてるヤツを見るのは楽しかった。
 渇いた口唇にゆっくりと口づける。
「ユウ…え、いいの…?」
 自分から誘いをかけたのは片手で数えても足りるくらいだ。ヤツが歓喜しているのが手に取るように分かる。
「抱くのかよ抱かねぇのかよ、ハッキリしろ」
「ユ、ユウがいいなら…」
 戸惑いがちのラビの手に、チッと舌を打った。
「まどろっこしいな、寝てろお前」
 そう言ってトンと肩を押す。勢いでベッドに倒れこんだヤツを、上からまたぐ。



 見下ろすのは好き、だった。



「え、ちょ、ユウ…っ?」
 ラビがどんな表情をしているのか逐一知れる。
 綺麗なオレンジの髪が、シーツに溶けるのを見るのが好きだった。
「な、なあユウ、どうしたんさ今日は」
「うるせぇ」
 覆いかぶさって口唇を塞ぐ。ピクリと動いた腕は、やがて戸惑いながら俺の身体を抱きしめた。
 開いた口唇に舌を差し入れる。すぐに絡め返してくれる舌が、少しだけ残っていた羞恥心を吹き飛ばした。
 首筋に口唇を寄せる。
 ラビの手が俺のシャツの裾から入り込んだことに気づく。心の中で笑った。ヤツが精一杯俺を欲しがっているのが分かってしまうから。
「…っ」
 身体のラインをなぞられ息を呑む。
 知り尽くされてしまった性感帯は、ヤツの手でいとも簡単に解放されてゆく。
「ユウ、すっげぇカワイイ」
「妙なこと抜かすなっ、嬉しくねぇ!」
 くすぐったくて恥ずかしくて、額に巻かれたバンダナを目元まで引き下ろした。
「ユーウ、目ぇ隠されたらユウが見れないじゃん」
「見なくていいっ」
 そもそも俺のどこをどう見たら【カワイイ】なんて言葉が出てきやがるんだ。
「でもいっか。ユウのイイとこ知ってるし」
「っ…ア」
 いきなり握りこまれ、嬲られる。
 思わずベッドに手をつき、ラビの与えてくる感覚に酔った。



 いつからこんな風になったんだろう。
 ヤツの瞳は俺を追うのが当たり前になって、俺の身体がヤツを求めるようになって。
 周りには闇しかなかった。
 心地よかった。
 それが当たり前だと思っていたのに。



「ユウ…指、舐めて?」
 ラビがゆらりと手を伸ばしてくる。ヤツのせんとすることが手に取るようにわかり、俺は軽く首を横に振った。
「い……自分で…慣らす…」
「珍しくね? 見ててもいい?」
「いい、わ…けあるか、バカッ」
 未だ俺を嬲りながらラビはえー、と膨れる。可笑しくなって、指でその尖った口唇を弾いた。


 …のが間違いだった。


「…っ」
 ラビがその手を捕らえ、舌を絡めだす。俺の肩が震えた。
「ラ…ビ…っ」
 温かな感触が背筋にまでぴりぴりと刺激をもたらす。
「何、舐めてるだけじゃん? …感じる?」
 絡めながらの言葉が快楽を誘う。
 間接を唾液が伝う。
 湿った音が耳に入り込んだ。
「も…いい……っ」
 これ以上は熱が上がってしまう。
 手を引き剥がし、濡れた指を自分の秘部にあてた。
「く…」
 堪らない。
 自分をかき回しているのは確かに自分の指なのに、それに絡められたモノがラビの唾液だというだけで、恐ろしいほどに昂ぶってしまう。
「ア…っん」
 自分を追い立てているのは確かに自分であるのに、ラビに侵食されていると錯覚する。
「う……っあ…、は…!」
「ユウ…やらしー…」
「うるせぇ黙ってろ…!」
 ヤツが興奮しているのがわかる。
 それを感じ取って、また俺の欲望がレベルを上げた。
 指を引き抜き、息を吐く。
「ユウ? もうイイの?」
「……〜だ…から黙ってろっつってんだろ…!!」
 屹立したそれをあてがい、ゆっくりと埋めてゆく。
 内臓全部が口から飛び出してきそうな圧迫感。
「んん……!!」
「っ…ユウ、悪ィ…ちょっと……力抜いて」
 キツイ、と浅い息の中音にしてくる。
「…っかやろ……てめェがでけェんだろうが…!!」
「だ〜ってユウが自分からして…くれるなんて…珍しい、じゃん? オレも興奮してんのさ〜」
「知るか、馬鹿っ…」
 口唇が震えた。喉が震えた。────歓喜に。
 この男は求めたものを与えてくれる。
「ん…っ」
「ユウ、やっぱキツイ?」
 ラビはそう言ってバンダナを押し上げる。鈍色の瞳が心配そうに俺を見上げているのがくすぐったくて。
 嬉しかった。
「……平気、だ。い…から寝てろ」
 愛しくて、愛しくて、ゆっくりと身体を傾け喉許を強く吸った。
 くっきりと痕が残るように。
「つ…ユーウ、あんまり強くしたら痛いってー」
 嬉しそうに責めるヤツがおかしくて、位置をずらし同じような痕を残した。
 所有、の刻印。
「情熱的だな〜ユウは〜」
 照れ隠しなのか、茶化すように笑うラビ。
 俺もそれにつられたのか、照れくさくなって顔を背けた。
「ユウ? 怒った?」
「別に怒ってねェよ…!」
 ラビの手が頬に伸びてくる。ゴメンて、と。
「お詫びにユウにもつけたげるー」
「バッ、馬鹿ラビお前っ、急に動くな!」
 ラビが身体を起こし、俺の身体を抱え込む。
 必然的に深くなってしまった結合部が疼いて、びくりと身体を震わせた。
「え〜、でもユウ見てたら人形なんてマジ無理さ〜」
 そんなワケのわからないことをほざきながら、ラビはそのまま俺を押し倒す。
「あう……ッ…」
「ユウ、大好き」
 動き始める余裕のなさげな腰に、俺の抗議は無駄に終わった。
「……んの馬鹿ウサギっ…」
 せめて愛しい肩に爪を立て。