純真

2005/03/27



 初めて繋がったあの日は、お互いに触れ合うだけで精一杯で、はっきり言って快楽なんて二の次だった。
 恥ずかしくて怖くて嬉しくて、何度も何度も、互いの名を呼び合い夜に溶ける。傍にいられるだけでいいなんてそんな純真が、星屑のように散っていった。



 乱れてしまった息を整えるために、二人して長く長く息を吐く。



 走り出してしまった若い想いは留まるところを知らず、顔を合わせる度に、一緒に肌まで合わせていた。
「明日……任務だっけ、ユウ?」
「…いや…コムイからは何も聞いてないな……」
 未だ気怠げな仕種で、二人はお互いの吐息を感じ貪る。吐く息の温度さえ覚えてしまった付き合いの長さが、ときどき無性に頼りなく思えて。
「もっかいしても平気…?」
「……そんなにサカる程…間空けてねェぞ…」
「四六時中でもユウん中いたいんだって…」
 答えを聞かないまま、否、言わせないように口唇を塞ぎ、彼の身体を硬いベッドに押し付けた。応えるように口唇を開きラビの舌を受け入れ、神田は彼の背に腕を回す。
「まるで野獣だな…」
「言うね。ユウだって感じてるくせにさ…」
「っあ…」
 決まったような起動を辿る性の行為がひどく愚かしく思えて、つながることしか思いつかない自分たちがひどく幼く思えて、気が遠くなるほど体温を貪った。
「壊しちまいそうさ…ユウ…」
「そん…っなヤワじゃね…ェよッ……」
 脚を抱え上げるラビがふっと笑う。その笑い顔は神田の好きなもののひと、つ。
「そんなん言って…ヤり殺されても文句言えないんさ? ユウ」
「…ハ、やってみろよ、ラビ」
 ギシリとベッドが啼いた。もともと二人分の体重を受けるために作られたものではないのだから、古びたベッドが悲鳴を上げるのは当然のことで。
「あ……」
「ユウ……まだ全然イけそうさ…? ホラ…」
「バッ…無茶なことす…じゃね……っ」
 高々と抱え上げた脚に、ラビは楽しそうに口づける。そんな仕種だけでも繋がった部分は敏感に反応しうごめく。それは貪欲で浅ましく、互いと自分を追い詰めた。
「ラビ……」
「なあユウ? 朝までに何回イけるか試してみるさ…」
 ひゅ、と息を呑んだ。
 朝までとは言うがまだ日付を超えてどれだけも経っていないはず。
 またこの男は無茶なことを企むものだ、と目を細め。
「ユウは【ヤワじゃない】んだろ…?」
「…てめェの方が…っ先にへばっ…てオチ、る…なんて冗…談はねェ……だろうな」


 目を、細、め、笑っ    てやっ、た。


「────イイね。その顔」


 凶悪に微笑んで、野獣みたいに覆いかぶさってくるラビを、両腕で抱きしめ、神田は薄く薄く、笑った。



「アイシテル────」



 この日最初のアイシテルが、耳をすり抜ける。なおも紡ぎだすそのコトバを口唇で吸い取って、行為は結局朝までも続けられた────



  隣りで目覚めることを夢に見て  必死で体温を記憶した


      あの日にはもう  手が      届かない────