2005/03/04



 朝が来るのが怖かった。
 どれだけ近くに行っても、朝目覚めるたびに怖くて、眠らないように、眠らないようにと抱きしめているのにいつの間にか眠りに堕ちていて。






「んん…っふ」
 長い長いキスをして、ユウ、と名を呼んだ。それに気づいてか、ゆっくりと目蓋を持ち上げ、だけど視線が噛みあった瞬間気恥ずかしそうに逸らしてしまう。
「ユウ……こっち見てよ」
 汗ばんだ額に、紅潮した頬に、いくつものキスを降らせた。
 くすぐったそうに身をよじるユウがものすごくカワイくて、コクリと喉を鳴らす。
「っ……ラビ…!」
 思わず欲情してしまったそれは、まだ引き抜いていなかったためにユウにダイレクトに伝わってしまう。
「悪い、ユウ」
「馬鹿、もう無理…っ……」
 ユウの中で存在を誇張し始めたオレに、びくりと震える。かすれた声が、口唇をかすめた。
「ァっ……」
「ユウ、もっかいしても、いい?」
 耳元で、低く甘く囁く。自分がこんな声出せるなんて、ユウに出逢うまで知らなかったさ〜。
「ダメだって言ってもするくせに……っいちいち訊くな……ッ!」
 涙の浮かんだ瞳で睨み上げられる。
 ユウ。それ、逆効果さ〜。
 んん、確かにユウの言うとおりなンだけどさ〜。止める自信、ナイもん。
「さすが、よく分かってるさ〜」
「んんッ…」
 いつもと同じやり方だ。抗議を聞かないために口唇を塞ぐ。
 口唇を食はみ、舌を押入れ、ユウの舌を絡めとリ、ねっとりといやらしく貪っていく。
「っふ…んんッ…ぁ」
 もう無理、と言いながらもちゃんと反応を返してくれるユウ。


 こゆ時、【ああ、愛されてんのかな】って感じるんさ。


 えっちしよーって言うのも好きって言うのも、いっつもオレの方。ユウからは絶対言ってくれない。
「っ…う……あ、んん…!」
 オレが好きって言うと照れてすぐ顔逸らすんさ。
 嫌われてないってのはわかるケド、愛されてンのかっていうとチョット自信ないさー。
「っは…ぁ…、は…っあ、く…!」
 もともとはオレのワガママから始まったカンケイだし、いつも傍にいられる状態でもない。任務中でも無線で声は聞けるけど、公私混同するな、ってユウに怒られるからな〜。
「ユウ、ここチョット力入れて?」
 目蓋にキスしながら、入り込んだ自身でその場所を指し示す。ユウが薄く目を開けて、オレの名を呼んだ。
「ラビ……?」
「ヨくしてやるからさ、ユウ」
「あっ…!」
 少しだけ動かした腰に、素直すぎるくらいに反応し、オレの肩に爪を立てる。結果的に力を入れることになってしまい、オレはユウに気づかれないように口の端を上げた。
「あぅっ…っは、はぁ…っはあ……ん、く…」
 締め付けてくるユウが愛しくて、制御できないほど激しく腰を動かす。
「ひぅ、う、あッ……ラビ…っラ…ビ…」
「ごめんユウ、ちょっと余裕ないんさ……っ」
 ユウの脚がびくりと揺れる。汗ばんだ首筋に口付け、吸血鬼のように強く吸う。いっそ血の一滴までもオレのもんだったらいいのに。
「ユウ……好き…ずっと大好き…」
 ラビ、と呼んでくれるその声にさえ興奮する。
「アイシテルさ……ユウ…」
 ずっと奥まで突き刺して、ユウの中で、果てた。







 また無茶なことをさせた、と。
 いつも終わってから後悔する。疲れたような横顔を見下ろし、乱れた黒髪をゆっくりと梳いた。
「ちゃんと大事にしたいんだケドな〜…」
 目元に残る涙の痕。そっと触れると、うっすらと目蓋が開く。……起きてた…。
「いっつも同じこと、言うんだな。オマエは」
 学習能力がないのか、と呆れたため息。
 …否定できないんさ…。
「いい加減に理解しろ。本気で嫌ならオマエを叩ききるくらいの能力は持ち合わせてるんだぜ」
「────ユウ…」
 嫌じゃない、って解釈で、構わないんよな、それって。
 嬉しくて嬉しくて、腰を折ってゆっくりと口づける。
「……ラビ」
「ん?」
「今から言うこと、聞き流せ」
 そう言ってユウは背中を向けてしまう。遠くへ行ってしまいそうで思わず手を伸ばしたけれど。


「オレを抱きしめるオマエの腕、結構好きだぜ」


 途中、石のように固まった。
 息が止まった。背筋が震えた。
「ほんと…? ユウ…」
 ヤバイこの人マジで好き。大好き。
「ねえ…ユウってば…」
 ユウはもうなにも答えてくれない。だけど、オレさ。


 泣いちゃうくらい、嬉しいんさ、ユウ。


 ゆっくりと、ゆっくりと背中から抱きしめる。腕を絡め、身体を寄せる。
 しっかりと記憶されたユウの体温が、オレを安心させた。
「ユウ……」
 今日は、眠ろう。
 ユウはこの腕の中にいてくれるって、わかるから。
「…おやすみ……」
 素直に身を預けてくれたユウの髪に口付け、ゆっくりと眠りについた────