境界線

2006/10/09



 アイツは俺がやるっつってんだ。
 ユウはそう言って聞かない。言い出したら本当に聞かないのは知っているし、そんなユウを、オレは大事に思ってる。
「ユウ」
 すぐに追うから扉の所まで行っててくれ、とアレンたちを先に進めて、振り返った。
 すらりと伸びた背筋が綺麗で、思わず見惚れてしまう。
「何してんだ、早く行けよ」
 心配しなくても後から追う、とユウは突っぱねる。戦いに私情を挟むことが嫌いなユウに、オレはあえて声をかけた。
 でも、一緒にここで残るためじゃない。敵はまだいるし、時間だって少ないんさ。オレだってここで止まるつもりはない。
 ユウを好き。
 ユウを愛してる。
 だからこそ、たった一言。


「────向こうで、待ってるさ」


 自分は先に行く。その先で待ってる。
 そうやって笑ったら、目を瞠ったユウが、一拍置いて口の端を上げてくれた。ハ、と不敵に笑ってくれた。
 大好きな、顔だ。
「ユウ」
 オレも、自分にできる飛びっきりの笑顔で返す。その先を続けようとしたら、ユウは軽く首を振った。
「ラビ、解かっている」
 言わなくていい、と笑うユウ。
 ああそうか。そうだった。言わなくてもいいんだ。お互い解かってる。
 笑い合って、お互い同時に背を向けた。


 愛してる。


 生きるために、お前はここに留まり、生きるために、オレはここを離れる。
 また、抱きしめあうために。
 振り返らずに歩き、扉を、開いた────。





 アイツは俺がやる。ウチの元帥狙ってきてたヤツだし、ここらへんでそろそろ叩いとかねェと後々めんどくせぇ。
 何より、時間がねぇんだろ。むしろ俺のために活路開いとけってんだ。
「ユウ」
 モヤシたちを先に進めさせたラビが、俺の名を呼んでくる。
「何してんだ、早く行けよ」
 まさかてめェも残るとか言い出すんじゃねぇだろうな、うざってぇ。そーいうのが嫌いなことは、お前がいちばんよく知ってるはずじゃねぇかよ。
「心配しなくても、後から追ってやる」
 睨み付けてやったら、ヤツは笑ってた。コイツ頭どーかしてんのか。
 ラビが、口を開く。ここに残るなんて言いやがったら、もう一度一幻ぶっ放してやろうかと思った。
「向こうで、待ってるさ」
 目を見開いた。まさかそれを言うために?
 バカじゃねーの、コイツ。そんなことのために。
 バカじゃねーの、俺。なんでこんなヤツに。
「ユウ」
 ハ、と笑ってやったら、ヤツが極上の笑顔を返してきた。こんなとき、ヤツが紡ぐ言葉はもうわかってる。俺は軽く首を振ってそれを止めた。


「────ラビ、解かっている」


 言う必要はねぇよ、解からない俺じゃねぇ。単純だからな、俺の惚れたヤツは。
 笑い合って、お互い同時に背を向けた。


 愛してる。


 生きるために、お前はここを離れ、生きるために、俺はここに留まる。
 また、触れ合うために。
 ノアを睨みつけ、六幻を、振りかざした────。