待ち合わせ

2005/08/13



「…嘘だろ」
 神田はまだはっきりしない意識で時計を眺め、起きなければいけない時間を優に二時間過ぎていることを、現実ではないと願いながら自覚し始める。
 ああ、あろうことかいまだ柔らかいベッドの上で。
 待ち合わせて逢おう、と言ったのは確かに向こうの方だが、それに頷いたのは自分の方だ。
「……さすがに待ってねぇだろな…」



 昨夜は珍しく、共に過ごさなかった。別々にいた方が待ち合わせっぽいでしょ?と笑うラビに、頷いてキスだけ交わした。
 いつもだったら限りなく激しく、濃密で、愛おしい、そんな過ごし方をして、朝には身体が悲鳴を上げるほどだと言うのに、それでも時間どおりに起き上がる。
 なんとしたことだろう。
 行為をしなかったときの方が、寝つきが悪いだなんて。…浮かび上がるのは、いつもある体温がすぐ傍になかった事実。それだけのことで、こんなにも変わってしまうのか。



 約束の時間は一時間前。ここから待ち合わせの場所まで二十分。
 ともかく連絡を、と思ったが、そうだそういえばアイツのは壊れていたんだと頭を抱える。
「待ってるわけ、ね…」
 そうだろうか?
 逢おうと言われて頷いた時、これ以上ないというくらい嬉しそうだった。



 ……待ってるかも。
 ……多分、待ってる。
 ……絶対待ってる。



 神田はバサリとベッドを抜け出し、シャツを羽織り、髪もとかさないで走り出した。
 逢ったら初めになんて言おう?
 ごめんなさい?
 起きられなかった?

 ……愛してる?

 全部、言おう。
 ラビ、お前に。