言葉までの距離

2005/08/13



 ドアノブに手をかけた。どれだけかの確信を持って開けたそこに案の定、捜していた男を見つける。
 ツカツカと歩き、自分オ存在に気づいていない様子の彼に寄った。
「ラビ」
 顔の前に広げられた本を上からひょいと取り上げ、やっぱりここにいたのかと取り上げた本を片手で閉じる。
「無線切ってんじゃねーよ。ブックマンが呼んでたぜ」
 なぜ自分が、こんな奥まった書庫にまで呼びに来てやらねばならないのか。連絡手段であるゴーレムの電源をラビが切っていたことと、手の離せないブックマンとすれ違ってしまったことが運の尽き。
「あーごめんユウ。すぐ行く」
 取り上げられた本を神田から受け取って、にこりと笑うラビ。本当に知識を吸収することが好きなのだなぁとこんな時思う。
「あまり根を詰めるなよ? 眼に良くない」
 本を読み出したら周りにあまり目を向けない男だと知っているから、時々こうして釘を刺しておかねばならないだろう。
「ん、サンキュ」
 それを彼もわかってくれている。以前は流れることのなかった優しい空気に、思わず頬が綻んだ。
「ユウ、身体の調子はどう?」
 意識を取り戻してから二日経つ。さすがに痛みももう消えた、と神田は応える。サンスクリットの祝福か呪いか、傷痕さえも。
「オレも今日、抜糸だったんさ」
 痕は残るだろうけど、と脇腹を押さえる。彼の身体には傷痕も多く残っており、自分と比べてどれほどか人間らしい。
「ユウ」
 少し俯いた神田の心の内に気づいてしまったのか、ラビは腕を伸ばしてその頭を抱きこんだ。同じ種類の鼓動さ、と指を絡める。
「…ラビ」
 神田は小さく呟いて、指を絡め返してくれた。
 愛しいと胸が高鳴る。抱きしめるだけではもう物足りない。
 抱き寄せた耳許に低く囁いた。
「ユウ、今夜…いい?」
 明らかな誘い文句に、心の準備が出来ていなかった神田が驚いて、パッと身体を離してしまう。
「オマエの部屋、行くからさ」
 待ってて、と鼻先に口づける。頬を染めた彼はとても新鮮で、可愛らしいと微笑んだ。
 ブックマンが呼んでいるということは、新しい歴史の吸収か、この眼の治療。少し長くかかるかも知れないけれど、と付け加えて、神田が応えてくれるのをじっと待つ。間もなく、目を閉じた神田の顔が近づいて。
「…わかった」
 そっと触れてくる口唇が、僅かに震えていたのに気づいた。
 照れ隠しなのかそれとももっと別の感情なのか、神田は視線も合わさずに背を向ける。ラビは少し苦笑して、手にした本を棚に戻しに、こちらもまた背を向けた。
 扉はパタンと閉まったけれど、心の糸が切れることはなく、ふたり別の空間で、密やかに微笑った。
  






 時間が経つにつれて、心臓の鼓動が大きく速くなっていく気がした。わけもなく部屋を見回し、いつもと変わらないことにホゥと息を吐く。
 濡れていた髪をタオルでしっかりと拭いた。風邪を引くだろうと、いつだったか怒られたことを、今更ながらに思い出した。
 あの頃は濡れた髪を拭くよりも、身体を繋げることに夢中になって、敏感に反応を返す自分に、何の不思議も感じてなかった。
 いつからだったんだろう。行為自体が息苦しくなってきたのは。指を、舌を絡めても、なぜか白々しく思えて、それでも反応を返してしまう自分に嫌気が差した。
 ラビがよりいっそう激しく責めるようになったのも、ちょうどその頃だっただろうか。きっと彼も、葛藤していたに違いない。
「……」
 湿ったタオルで乾いた口唇を撫で、その口唇がラビ、と名をなぞる。
 その音が右から左へすり抜けていたときとは違う。その音のひとつひとつがたまらなく愛しく思えて、ガラにもなく甘ったるい息を吐いた。
 トントンと鳴る部屋の扉。日付が変わろうとしている時間帯。こんな時間に訪ねて…いや、そもそも自分の部屋に訪れる人物など、一人しかいない。
 それでもノックをするのは珍しいなと思って、ゆっくりとドアを開けた。
「悪い、遅くなったさ」
 肩を竦めるラビに、別に構わないと吐き捨てて身体を翻す。開け放されたドアからラビの身体が滑り込み、彼は後ろ手に扉を閉めた。
「風呂入ってたんさ? いい匂いがする」
 まだ少し湿った髪を一房つまみ上げ、くん、と鼻を揺らす。
「…鍛錬していたからな」
 それを払うように、肩にかけていたタオルを引き、投げる。バサリと鳴ったそれは大人しくベッドの柵に引っかかり、力を無くした。
「まーたオマエは。病み上がりだってのに」
「暇なんだよ。軽い謹慎くらってるから任務ねぇんだ」
 問題が解決して六幻とのシンクロ率は上がったけれど、勝手に飛び出した行動には少しだけ罰を与えるよ、と室長であるコムイに言われてしまっている。
「そっか。じゃあちょっとゆっくりできるさ。オレもここ来る前、明日は任務入れるなって言ってきたし」
 背を向けた神田を振り向かせ、笑顔を見せる。一瞬見開かれた目が、次の瞬間には呆れたように細められ、予想通りの反応さ、とラビは笑った。
「まぁ、AKUMA討伐の任務なんて、ない方がいいけどな」
 イノセンスの回収なら話しは別だが、と肩にかかった髪をパサリと払う。その仕種さえたまらなく愛しく思えて、勢いのままに抱き寄せた。
「ラビ」
「ごめんユウ、今日はちょっと…朝まで寝かせてやれないかも知んないさ」
 細い身体をぎゅうと抱きしめると、それに応えるように、神田が背中に腕を回してくれる。
 温かい、と安堵し息を吐き、同時に心臓が高鳴った。
「…心音、速くねェかオマエ」
「ユウこそ、速くない?」
 ドクンドクンと波打つ心臓に耐え切れず、身体を押し戻す。神田の黒髪が揺れた。
「知るかよ! てめェのが速ぇからつられてるだけだ!」
「だって何か緊張するさー」
 緊張、という言葉が、自分の心臓が速い事実にピンと当てはまる。
 身体を重ねるコトなんか、数え切れない程してきたというのに。
「こうやって気持ち全部繋がってからするのって、初めてさ? スゲー嬉しくて、心臓どうにかなりそう」
「あ、あ、あ、赤くなんなよ、こっちまでつられるだろうが!」
 顔を赤らめた幼い顔が目に飛び込む。それを新鮮だと思って、気持ちが繋がりあったという事実を今さらながらに認識した。
 赤くなるな、という神田の方こそ、耳まで真っ赤に染まっていた。
「…じゃ、じゃあまずはキスから?」
 抱き合って見合う。これからの行動を確認してしまうなんて、今までの情事では有り得ない。すぐに貪りあって倒れこんで、熱を奪っていたのに。
「……あぁ」
 身体を寄せ、口唇を近づけていく。
 勿体なくて目蓋を閉じきれず、ふたりの視線が絡み合って、そっと啄ばんだ口唇が離れ。
「……」
「……」
 お互いそれだけではやっぱり足らず、ぺろりと神田の口唇を舐める。応えるように口唇を開いた神田の中に入り込み、戸惑う舌を追い詰め捕らえた。
「…っ…」
 びくりと強張った手がやがては抱きしめるラビの腕を頼り、首に周り引き寄せる。
「ん…」
 もう目を閉じても、目の前の人が消えることはないと思い、ふたり同時に目を閉じる。
 頬を撫で、髪を梳き入れ、身体を抱きしめて、貪る角度を変えていく。
「っはふ…」
「…ユウ…」
 合間に名を呼ばれ、自分も呼び返そうと思っているのに、容赦なく口唇を塞がれて、叶わなかった。
「ん、ん、は……んぅ」
 乾いていた口唇が濡れ、含みきれなかった唾液が口の端から逃げていく。
 立っていられない、としがみつく神田の身体を押し、ベッドに倒れ込む。長い髪が、遅れてベッドに舞い散った。
「ぁっ……」
 身体が合わさって、それさえも嬉しいと声が上がる。口づけをしたままそれを可愛らしいと思って、深く深く、貪った。
「はぁっ…」
 ようやく解放された頃には腕に力など入らず、ふらりと落ちる。
「あ…」
 弾みで、ラビの右眼の眼帯に手が触れた。
「悪い」
 荒い息の中そう告げてくる神田に、ラビは腕を動かす。
「ユウの前では必要ないさね」
「…おい!?」
 そう言って、右眼を隠す黒を取り、ベッドの下に放った。何をしているんだと止める暇もなく、晒されたラビの右眼に、息を呑む。
「……触ってもいい、か?」
 斜めに走った傷跡と、色彩のない眼球。左の灰緑と見比べると、明らかに異質なもので、もう機能しないものなのだと知れた。
「うん」
 震える手を動かし、傷跡に触れる。ラビが、ゆっくりと眼を閉じた。
 右眼を大切な人にやったと彼は言った。この状態を見るまでは、移植でもしたのだろうと考えていた。
「ラビ…」
 傷を、指でなぞる。
 この眼を傷つけられても大切だと思うヤツが、オマエにも居たんだなと悟り、心臓が痛んだ。
 神田は少しだけ身体を起こし、その傷に口唇と舌で触れる。
「…っ」
 ラビの身体が強張ったのは、密着した身体で知れてしまう。
「悪い、痛いか?」
 治るものではないと解かっていても、何かをしてやりたいと心から思う。痛みがあるのなら、せめてその痛みを吸い取って。
「ううん、ダイジョブ。ちょっと驚いただけさ」
 ホ、と息を吐いた。ユウの舌が温かくて気持ちいい、と笑うラビに頬を染める。
「ユウの口唇って魔法みたいさ。オレを落として追い詰めて、そんでもその口唇で嬉しくさせてくれる」
 指の腹で口唇をなぞられて、オレの台詞だとその指を軽く噛んでやった。少しも痛くないそれは愛撫のようで、胸が締め付けられる。
「大好きさ、ユウ」
 心から思って、口づけた。
 抱き寄せてくれる腕を、この想いに応えてくれているんだと思い、今度こそ快楽と愛情を与えてやれると、本当に嬉しかった。
「んっ…ん、ふ」
 ぴちゃりと音を立てながら貪って、抱きしめる腕を動かして、白いシャツの裾から滑り込ませる。気づいた神田が僅かに驚いて、その腕を止めるように手を添えたが、力のないそれはまったく意味がなく、ラビは侵入を続けた。
「んぁ…っ、ん」
 口唇を話した隙に漏れる声。辿り着いた胸の飾りを指の腹で押しつぶし、捏ね回す。早い反応に口の端を上げ、ちゅ、とキスをした。
「相変わらずいい反応さ」
 耳許で囁くと、神田が気づいて口を押さえる。
 どこまで我慢できるだろうかと首筋に口づけながら、もう片方の手を滑り込ませ、シャツをたくし上げた。
「ん、……っぅ」
 両手で胸を弄り熱を溶かしてく。ぷくりと立ち上がる赤い突起を摘み上げ、押しつぶし、爪で弾く。
「ん、んぅっ、んうう…っ」
 突いて出てくる声を我慢しているせいか、呼吸がいつもよりも荒く、心音が速くなった。
「まだ我慢してるんさ?」
 僅かに苦笑して、口を塞いだ手に口づけて舐める。
「あっ…」
 温かな舌の感触にびくりと肩を震わせ、思わず声を上げた。すかさず絡め取り、胸への愛撫を続行する。
「あっ…、あ、や」
 際限なく漏れる声に嬉しくなり、顔をずらした。
「んっ!」
 舌先で胸の飾りを転がされ、びくりと脚が跳ねる。吸い付き甘噛み、舌で捏ね回す。
「んぁ、あ…」
 気持ちがいいと、ラビのシャツを握り締め応える神田。
「っひ、…あ、ン」
 手が滑り、肋骨を、脇腹をやわやわと愛撫する。身を捩って、快楽から逃げようとする神田を押さえつけ、胸の下に自分の痕を残した。
 白い柔軟な肌に残す赤い痕は鮮明で、思わず顔が綻んだ。
 以前身体を重ねていた時だって、こんな風にキスマークをところどころ残したことはあるけれど、自分のものであると思うことは、一度もなかったような気がする。
「ラビ…」
 荒い息の中で苦しそうに、それでも呼んでくれる名前。
 愛してるって言ってくれた。
 この人をただ大切にしていこうと思う。
 伸び上がって耳許に、
「愛してるさ…」
 そう囁くと、応えるようにキスをねだる愛しい人。
 深く深く口づけて、脚を割った。さほど力を必要としなかったのは、神田自身も望んでいたからだろう。
「ン…」
 手が脇を滑り、腹の筋をなぞる。それだけでも緩やかな快楽が襲い、身体が震えた。
「あっ……ラビ…!」
 服の上から手のひらで包み、形を確かめる。それはすでに硬く反応しかけ、ラビの手に馴染んだ。
 指でなぞり、立ち上がりかけたラインに沿って触れるか触れないかの愛撫を続けられ、神田がふるふると首を振る。
「や…嫌だ……っ」
「嫌?」
 男の前で脚を開き、シーツをぎゅうと握り締める。布越しの愛撫が、たまらなくもどかしい。
「んっ…ァ、ちゃんと……触…っ」
 ごそりと動く手も曖昧で、わざとそうしているのがはっきりと解かる。
「ちゃんと? 触ってるさ? すごく熱くなってるみたいさね」
 指先がいやらしく蠢く。
 布越しでも熱が伝わるくらい、自分が今どうなっているか解かっているくせに、それでも曖昧な快楽しか与えずに、耳元でそんなことばかり囁いてくる。
「…ッカ……焦らしてんじゃね…ェよ」
「…ユウ!?」
 直に触れて欲しいと願って、浅ましいと知りながらも、自らホックを外した。そのままジッパーに指をかけジリジリと下げていく。
「ちゃんと……中…っ」
「……ッ」
 ふしだらな感情が、自分の中にうずくまる。
 欲しがる自分が、吐き気がするほど嫌な時があった。
 それでもこの想いが、そんなもの払拭してしまう。
 ラビ、と甘く呼ばれる声に、こくりと唾を呑み、彼の望むとおりに手を忍ばせた。
「あぁっ……」
 やっと与えられる直接的な愛撫に身体がのけぞる。最初は僅かに体温が低かったラビの手も、次第に神田と同じ温度に揺れ、息を荒くした。
「あ、あっ…や、ン」
 快楽に意識を持っていかれないよう、指を噛んで耐える神田の様子がもどかしく、脚に引っかかる着衣を取り除き、自分もシャツを脱ぎ捨てた。
 外気に晒された神田の脚は相変わらず白く、少し撫でてやるだけでビクリと跳ねる。
「ユウ、感じすぎ」
 揶揄う意味でなく笑ったラビに気づいて、思わずうるさいと顔を逸らした。
 だってずっと欲しかったんだ。
 さすがにそれを音にはできず、口唇を噛む。無理やり抱かれたあの拷問のような行為を除けば、ラビに触れてもらうのは一体どれくらいぶりだろう。
「んっ…?」
 ラビの身体が下にずれる。急に体温がなくなって目を開けた。
「あうっ…!」
 途端、口に含まれる。開いた脚をそのまま押さえられ、温かな口内で形を変えていく自分。
「あっ、ア…ん、んっ…ん」
 舌が形をなぞって、口唇ですっぽりと包まれた。ぴちゃりぴちゃりと聞こえる音が、ラビの舌の動きを想像させて居たたまれなかった。
「ふっ…う、あ…!」
体液の滑りを借りて、ラビは指を一本、神田の奥に侵入させる。びくりとのけぞったせいで、余計にそれを深くした。
「あっ、あ、あ…ラビ、ラ…ビ…っ」
 熱い舌と口唇と、指で弄られて頭の中が真っ白になる。絶え間なく襲ってくる小刻みの快楽が、神田の腰を浮かせた。
「んっ…んん、やめ…ラビ、も……よせ」
 ラビを引き剥がそうと腕を伸ばしたが、それを察知したかのように指が増える。入り込んだ指でかき回され、びくびくと脚が踊った。
「う、っや…ァ、や…ラビ」
 これ以上は勘弁してくれと首を振る神田に気づいていても、ラビが愛撫をやめることはない。むしろよりいっそう激しく責め立て、舐るように舌先を動かした。
「っあぁ…! んぁ、も…ダメだラビ……っ…イッちまう……!!」
 瞳の端から溢れる涙が、目元を押さえるシャツを濡らす。
「いいさ、イキなよこのまま」
「っふぁ…あっ…」
 口唇を離したラビから濡れた糸が伝う。手指で弄られ、舌で先端を刺激され、後ろをかき回される。前と後ろを、同時にこんなに責められて、我慢が利くはずもなく、
「ア、っあ…、く」
 腰が揺れ、入り込んだラビの指をきゅうと締め付ける。それでも動き続ける彼を、少しばかり恨めしく思いながら。
「んあっ…あ、あ…ッや、────ッッ…!」
 達して、荒い息を繰り返した。上下する胸がほんのり色づき、熱を持っていることを報せる。
「はぁっ、はぁっ…、ん、ふ」
 指を挿入したまま伸び上がって、ラビは神田にキスをする。
「ユウ、いい?」
 何が、とは訊くだけ野暮だ。余裕のなさそうな声にこくりと頷いて、
「…すぐで、いい」
 とラビを抱き寄せた。
 引き抜いて入り口をつい、と撫で、自分をあてがう。ふるりと神田が震えたのが、密着させた身体から伝わってきた。
「ぁ…ッ」
 先端だけが入り込み、様子を窺うように動かされる。
「嫌だっ……ラビ」
 先端だけの抜き差しを繰り返されて、神田が焦れる。自分で腰を動かし、ラビを飲み込もうとしていた。
「奥まで…」
 そんな神田を愛しく思い、ずぐりと一気に奥まで入り込んだ。突然の衝撃に身体を反らして受け入れる。本当に奥の方まで入り込まれて、息ができないくらい強く抱きしめられて、声を上げた。
「んああ…っ…」
 のけぞって上向いた顎に歯を立てられる。それさえも愛撫に成り代わり、神田を震えさせた。
「動くさ?」
 耳元でそう聞こえたかと思った次の瞬間、ラビが腰を動かした。
「ア…ッ」
 中が擦られて、走る快感がたまらない。小刻みに動いていたかと思うと、突然にギリギリまで引き抜き突き刺したり、知り尽くされた性感帯が、ラビによって刺激されていく。
「っ、あ、く、ふ…っう」
「ユ……中、すげ…熱い」
 ゆさゆさと揺さぶられ、脚がビクビクと忙しなく跳ねる。襲ってくる快楽に、せめて耐えてみようと、胸で皺を作る白いシャツをぎゅうと握り締めたけれど。
「あっ、や、ラビ……もっ……も…とゆっく、り」
 逃れさせてもくれないような激しい責めに、音を上げて首を振った。
 脚を抱え上げ、神田の内へ内へと入り込む、ラビの髪が揺れる。
 ギシギシと喚くベッドがふたりの身体を受けて、シーツを千々に乱した。
「ふっ…う、あ、ア」
 奥深く擦り上げられ、その熱さに耐えられないと彼の名を呼ぶ。
 何度も、何度も繰り返し、絡められた指をぎゅうと握り返した。
 大切そうに、本当に大切そうにキスをして、ラビは神田の髪を撫でる。そろそろこちらも限界だ、と神田の解放を誘った。
「ぁ、あ…っや」
「ユウ……」
 細い身体を強く抱きしめ、腰を推し進め、そうしておいて、ギリギリまで引き抜く。ねじ込んで、そのまま一気に奥を突き刺した。
 ガクガクと腰が揺れて、頭の中が白く濁る。
「あ、ン、…や、ラビ…っも…」
「…一緒にイこ?」
 うっすらと開けた瞳に、ラビの双眸が映る。その傷を晒してくれた彼をたまらなく愛しく思い、今一度口づけた。斜めに傷の入った右眼に。いつも自分を追ってくれた左眼に。
「ラビ……」
 吐く息とともに大切そうに名を呼び、キスをねだる。微笑んで伸び上がる、彼の口唇を与えられるがままに貪った。
「んっ……!!」
 身体の、ずっと、ずぅっと奥まで押し入られ、熱を伝えられる。耳許で愛していると囁く声が、神田の意識を彼方まで持ち去っていく。
「あああぁッ…────」
 昇り詰めて、達した。押し込めた肉壁の締め付けに、ラビもその奥深くに性を放つ。ビクビクと痙攣する身体から己をゆっくりと引き抜いて、神田の身体を裏に返した。
「あっ…!?」
 腰だけを包み上げさせ、体重を乗せる。
「バッ…バカ無理…!」
「最初に言ったさユウ。朝まで寝かせてやれんて」
 余裕なんかないんさ、と神田に己を埋め込んだ。湧き上がってくる快楽にシーツをぎゅうと握り締め、せめて背中に乗る体温が離れていかないようにと、ただ願った────。






 朝まで続いた行為に疲れ果て、温かな腕の中眠る。
 眠りに落ちていく寸前囁きあった言葉が、いつまでも耳の奥にのこり、子守唄に変わる。
 こんな幸福なことがこの世界の中にも残っていたのかと、ふたりで静かに目を閉じた────