感謝、感激、雨、…キス?

2005/08/10


 プレゼントくらいちょうだい。


 今日がヤツの誕生日だってことくらい、知っていた。
 何年も一緒にいるし、コイツは毎年毎年、ウザいくらい主張してくるし。バカヤロ、わざわざ主張しなくても、忘れるわけあるかってんだ。
 あ? …まぁ、それは、その。なぁ?


 忘れられない、間柄、だから、だ、なぁ?


「ユウおめでとうさえ言ってくれない。せっかくふたりで本部にいられんのにさぁ〜」
 ああ、確かにそれはそうだ。普段だって中々ふたりでいられる時間なんか少ないのに。今日この日をふたりで過ごせる事はやはり神だか誰だかに感謝しなくてはいけないだろうか。
「…………なんで、オレがそんなこと言わなきゃなんねーんだよ」
「ひでぇさ、コイビトドウシなのに〜」
 ベッドの上で胡坐かいて前に両手ついて、着替えをするオレを見上げるのは、ラビのいつもの仕種。
 朝の修練を終えて、食事を済ませて、途中司令室に寄って、任務がないのか、確認した。それでもいつ任務が降りてくるか分からない。団服だけは、身に付けておかなきゃなんねぇ。
 オレたちにとって任務は最優先で、個人の感情と生活は後回し。
「ああも、泣きそ、オレ」
「……ふざけんな」
 そんなラビを見てみるのもまた一興だろうが、正直泣き顔なんか見たかねぇ。オレはラビの前に仁王立つ。
「…何が欲しい」
 コイツの言いそうな事なんか簡単に予測がついた。ついたけれども、あえて言わせてやる。
 ラビは目を細めて、目一杯タメて、口唇を開いた。
「────…キス」
 ラビがそれを口にした瞬間、胸ぐら掴んでぐいと引いてやる。文字通り、まさにぶつかった口唇を、ぺろりと舐めて吸った。


 ああ、しまった。


「んんっ」
 油断したわけじゃねぇ。絶対違うんだが。口唇を探られ、思わず目を伏せてしまう。ラビはオレの口唇を舌でつつき、開けさせる。条件反射かよ、くそ。舌を差し入れられ、絡められる。
「ん、んん、っん」
 奪ったつもりが奪われた。
「んぁ…」
 ラビの胸ぐらを掴んだ手が緩む。冗談抜きでスゲェんだよ、コイツのキスは。頭ン中どうにかなっちまいそうだ。
 激しい雨みたいに心臓打ちつけて、無頼風みてぇに彼方まで連れ去っていきやがる。
「っふ…ん、ん、らび…」
 ちゅ、ちゅ…と濡れた音が耳に届く。すげぇ恥ずかしいのと同時に、嬉しくて気持ちいいなんて思う。
 …馬鹿か、オレ。
 指は鎖骨を辿り、肩に、首に回ってく。オレだけ立ったままのこの体制はさすがにキツくて、ラビの腿の上に乗り上げた。キスをしたままのオレのその行動に、ラビが口の端を上げたのは分かったけれど。
「ふぁ…ん、んっ…んぅ…っ」
 ラビの首に両腕を回し、身体を密着させる。コイツの体温はオレを安心させる。…コイツにとってオレの体温も、そうであればいいなんて甘いこと、考えてみたりした。
「ラビ…んぁう…ふ、んぅ」
 何度も、何度も角度を変えた。相手が気持ちいいように、自分が欲しいように。
 笑う。
 この男が欲しい。
「ん…ン」
 この男が、欲しいと思う。
「ユウ…もっとキスしよ…」
「んっ…」
 神様だか、誰だか。
 顔も名も知らねぇコイツの両親だか。


 感謝くらい、してやる。



「ユウ…」



 だからコイツをオレにくれ────