ホワイトクリスマス

2005/12/25



 寒い、と言い出したのはどっちが先だっただろうか。
 窓から覗くのは白い白い牡丹雪。
 空のこんな高いところにいても、それでもやっぱり雲の下にいるのだから当然雨も雪も舞い降りる。
 ただ、もっと低い、いわば地上にいた頃より、空からの降下物は近くなった気がしてた。



「ユウ、ダイジョブ? 寒くない?」
「寒いに決まってンだろうが。誰のせいでこんな格好してると思ってやがんだ」
 一応暖炉に薪はくべた。ふわふわの毛布も何枚か持ち出してきた。
 せっかくだから窓辺で雪を見よう、と言って聴かないラビにつき合わされ、音もしない雪を、ふたりで見上げだしたのは、確か1時間ほど前で。
 それでも最初の方は、故郷の季節について語り合ったりしていたんだ。冬にはとてつもない雪が降る、とか。夏にはセミがうるさくてかなわない、とかそんなこと。
「えー、オレのせいさ? なにユウちゃん。服着たままの方が興奮する?」
「誰がそんなこと言ってる」
 やがては指先が冷えてきて、ぎゅって手を握り合ってしまったのが、そもそもの間違い。
 久しぶりのそろっての休み、薄暗くなってしまった外の景色、しかもホワイト・クリスマス、なんて、雰囲気も手伝って、自然と口唇が合わさってしまう。
 柔らかなブランケットの上にふたり倒れこんで、繋がりを深くしてしまったのは、どちらもお互いを責めきれない。
「少し、疲れた」
「眠る?」
 優しく髪をなでながら、耳元で囁く。そういえば寝顔ひとつにドギマギしていた、そんな時代もあったなぁなどと、少し物思いに耽った。
「バカ、こんなとこでこんな格好で眠ったら、それこそ風邪を引く」
 一糸まとわぬ姿なら、それは否めない。確かに抱きしめてくる彼の体温は温かかったが、眠ってしまうには、包む毛布が頼りない。
「明日、だっけか。教団のパーティー」
「うん。リナリーが、任務から帰ってくるはずさ」
 一緒に出ようねとラビが額にキスを贈る。
 くすぐったい、と身を捩るユウの首筋に、スキ有りとばかりに口づけた。
「バッ…」
 口唇でラインを辿り、濡れた舌で熱を確かめる。
「バ…カ、やろ…まだ足んねェのかよっ…」
「足りんさ」
「おいッ……やめ…」
 ブランケットの中で脚が絡まる。尚も抗議を続けようとするユウの口唇を、無理に塞いだ。
「んんっ…」
 奥深くまで貪ると、気持ちよさそうに鼻を鳴らして背中に腕を回す。この人は本当にキスが好きだと、よりいっそう愛情込めて抱きしめた。
「っは……」
「ユウ…やっぱ身体少し冷えてるさ」
「んあっ…」
 何処を触っている、と振り上げた拳は、いとも簡単に受け止められてしまう。どだい、こんなことをされていては力が入るはずもないのだ。
「ごめん。でもこんな日くらい、オレのワガママに付き合ってよ、ユウ」
 組み敷いて見下ろした恋人の、綺麗な蒼眼が見開かれる。その中に映っているのが自分と天井だけで、嬉しいなんて思った。
「べ、別に…お前と、こ、こんなことすんの、ワガママに付き合ってるわけじゃねぇぞ…!」
 言われて、首をかしげた。
 顔を真っ赤にしながら言い募る、その表情が、たまらなく愛おしい。
「俺が……お前を欲しがってないとでも…思ってんのか」
「…ユウ…」
 愛しくて、愛おしくて、強く抱きしめた。
 普段、こんなことは言ってくれない恋人に、いくつもの、いくつもの口づけを降らせる。
 窓の外に舞う、雪のように。そっと、静かに。
「ユウ、ユウどうしたんさ? 今日はめちゃくちゃ嬉しいこと、言ってくれる」
 本当に嬉しそうなラビの表情に、ユウの頬が思わずに綻ぶ。
「クリスマス、だからな」
 白い雪に酔ったのかも知れない、とユウは照れ隠しに続けた。
 じゃあ毎日クリスマスだといいのにな、と口づけてくるラビを、呆れながらも愛しいと思ってしまったことは、言わないでおこう────



 翌日ふたり、風邪を引いてパーティーには出られませんでした、とさ────。