指先

2005/07/31



 抜けるような、青い空。



 こんな晴れた日は、二人で出かけるのもいいと思ったけれど。


「暑くねえか?」
「そりゃ、暑いさ」


 なんと言っても夏の一歩手前。日差しも暑いし風も乾いてる。
 窓の外に広がってく青い空を、二人して見上げた。


「あの雲なんか、ホントもこもこしててアツそうじゃんね?」


 指したラビの指先に、ユウの視線が動く。
 指した雲ではなく、その指先に。


「ユウ?」


 自分の手を見下ろし、そしてまたラビの指先に、瞳を映す。不思議がったラビが、ユウの名を呼んだ。


「オマエの指って、結構太いんだな」

 自分のとはまるで違う、と放ったユウの言葉に、ラビは苦笑。

「待って待ってユウ。それ絶対自分基準に考えてるっしょ〜?」

 オレのは普通さ、と右手を広げてみせる。太い関節が男らしいと、思った。


「ユウの指が、細いんさ」
「そんなことねえだろ」


 いや違う、違わない、と双方引き下がらない。こんなケンカは犬も食わないだろう。

「だったら今度、コムイやリーバーと比べてみるといいさ。アレンだとまだまだお子さまだしなー」
「バカヤロ。どっちにしろ年齢合わないだろ、比べようがねー」

 そうだそういえば、年齢が同じなのはお互いしかいないんだ。
 この人が唯一だったんだ。


「ユウの手はイノセンスを操る大事な指さ。この指が、六幻を発動させる」
「お前だって変わらないだろ、エクソシストなんだから」

 この手が世界を救う。そしてこの手が自分を堕とす。

「ユウの手、好き」
「お前の手は、心地いい」

 二人、手を重ね合わせた。指先を合わせ、離し、そして絡ませる。
 きゅうと握り合った手は、やっぱり熱かった。
 二人きりの部屋ではこれだけじゃ物足りなくて、お互い苦笑を漏らす。
 引き合わせた口唇は、どこからか入り込む風で乾いていた。

「ん…んぅ」
「ユウ…」
 指を絡み合わせたままで交わす口づけは、いつもより意識を麻痺させる。

「ねえユウ…外で熱くなるより、ここでアツくなろ…?」

 口唇を離した隙に漏れる誘い文句。言わせてしまったら最後、だ。

「てめ、責任もって浴場つれてくつもりなんだろうな?」

 だからたまにはそんな風に甘えてみたり。

「おやすい御用さ、ユウ」



 愛してる、と囁く声が、高い空に抜けてった。