キューティーハニー

2011/08/13


 あー暑い。アルト可愛い。
 ホント暑い。アルト可愛い。
 口を開けば暑いしか出てこないような猛暑、こんな日は一日ダラダラ過ごしていたい気もするけど、恋人が可愛い顔してねえどっか出かけようなんて言ってきたら、そりゃもうマッハで仕度もするさ。アルト可愛い。
 そう、隣でハニィレモンをすすってる俺の恋人は、こんなに暑いのに上機嫌だ。アルト可愛い。

「アルトー、それそんなに美味しい? それ飲みたかったの?」
「ん、まぁまぁかな。この間新商品出てるの見つけて、気になってたんだ。でも、あの、一人だと入りづらいし」
 ポッと頬を染めて俯くアルトに胸が鳴る。それを飲むために俺を連れ出したのか、俺を連れ出すのにそれがちょうど良かったのか……どっちが建前なんだろう。アルト可愛い。
 でも嬉しい、アルトがデートに誘ってくれるなんて滅多にないせいか、破壊力はバツグンだ。なんだこれ、仕種のひとつ、視線のひとつにドギマギするなんて、小学生かよ俺は。アルト可愛い。

「アルトがご機嫌で可愛くて嬉しいんだけどさ。ひとつ気になるんだよな」
「……何が? ヤだったのか?」
「なんで今日そんなに露出高いの?」

 ショートデニム。アルト可愛い。
 ノースリーブ。アルト可愛い。
 珍しくアップにした髪の毛。アルト可愛い。
 可愛いんだけど、可愛いんだけどそこかしこから野郎どもの視線が感じられんだよ! ああでもアルト可愛い。

「だって暑いし……」
「可愛くてエロくて、他のヤツの視線集めてんの気づかない? もーやだ、アルトは俺のなのに」

 アルトが一瞬きょとんとしてから噴き出した。アルト可愛い。

「はは、ミシェルお前、ヤキモチ妬きすぎだって。そんなん気にしてたら俺なに着たらいいんだよ」
「ベッドの中なら全裸でいいけどな」
「おい、こらミシェル、…………こんなとこでキスすんな、バカ」

 少し汗ばんだ肩を抱いて、覗き込むように口唇をさらった。外でキスをしたあとは決まってアルトの視線が泳ぐ。恥ずかしくて怒りたいけど、嬉しいから怒れないって感じだ。本当にアルト可愛い。

「こうして牽制しとかないと、隙あらばってヤツがいるからな。アルトと出かける時はいつだって目ぇ光らせてんだぜ」
「そんなこと言うけど、俺だってなっ……」

 少しは俺の苦労も分かってくれよと鼻先をちょんと指先で押したら、勢いで抗議してくる。アルト可愛い。
 言ってからしまったって顔して、また視線が泳ぐ。なあにアルトって言ってあげたら、観念したように少し長いため息をついた。アルト可愛い。

「俺だってな、お前と一緒に出かける時は目ぇ光らせてたりするんだぞ」
「え、なんで?」
「他の女がお前のこと見てるから」

 困ったように店内に視線を流し、独占欲いっぱいの愛情を口唇に乗せてくれる。アルト可愛い。

「でもな、最近は気にしないようにしてる」
「気にしない…………気にならないの?」
「だってミシェルは俺しか見てないからな。だからいいんだ」

 ふふ、とアルトは笑う。撃墜された。アルト可愛い。
 あーそうだよ、アルトしか見てないよ。どんなゴージャスでナイスバディなお姉さんでも、もうこの可愛いひとには適わない。アルト可愛い。

「じゃあ、俺も気にしないようにしようかな」
「ふん?」
「だってアルトは俺しか目に入ってないんだろ?」
「まあな」

 誘うようにアルトは目を細める。くそ、その顔弱いんだよ。アルト可愛い。
 視線をよこしてくるヤツらを牽制するように俺たちは舌を絡めたキスをして、暑い夏をやり過ごす。暑さと照れで染まる頬に、つい口許が緩んでしまう。アルト可愛い。
 そうして店を出て人混みへダイブ。暑いけど、アルトとならどこでも楽園。アルト可愛い。

「なあミシェル、今日は手ぇつないでてもいい?」
「もちろん。お手をどうぞお姫様。次はどこへ行こうか」
「お前と一緒ならどこへでも」

 ああかみさま。なんでこの人いっつもこうなの。結論・アルト超可愛い。