\オープンアルト/-2

2011/03/19


「ホント、可愛いなアルト。知ってたけど……再確認」
「ん、あっ……」
 ミハエルの手が、足を撫でる。ソックス越しの感触がもどかしくて、指先の動きをいつもよりもっと意識して追ってしまった。
 ことん、と脱げた靴が床に落ちて音を立てる。その音を楽しんで、ミハエルの手はふくらはぎを撫で足首を滑り、かかとを包んですねをなぞって上昇していった。
「あっ、や……だっ」
「どうして」
 太股を上り、パニエの中に入り込む手を、反射的に押し止めてしまう。だけどそれをどうしてなんて聞かれても、どう答えていいのかはわからない。
「は、恥ずかしい……っ」
「今さらだろ」
「あ!」
 ずいと入り込んだ手が、アルトに触れる。ミハエルは違和感に気づいて、パニエごとスカートを持ち上げた。
「へえ、下着もちゃんと女物なんだな。可愛い、アルト」
「い、言うな……ぁっ」
「なんで? 俺はアルトが可愛くて嬉しいのに。恥ずかしさにふるえてんのもイイんだけどね……余計にエッチで」
 真っ赤になった頬にちゅっと口づけて、アルトがそれに気を取られた隙に、下着の上からそれに触れる。あ、と上がりかけた声をキスでふさいで、背中のファスナーをわざとゆっくり下ろしていく。
「ん、んん……」
 はだけた鎖骨を舌でたどり、胸を強く吸って痕を残すと、アルトからは熱い吐息が漏れた。
「あっ……ぅあ、は」
 手のひらでこするアルトも、形を変えていく。簡単に陥落されてくれる恋人を可愛らしいと思って、ミハエルは胸の上で口の端を上げた。
「ミシェル……っ」
「はいはい乳首も触ってほしいんだろ、わかってるって、ちょっとくらい我慢しろ」
「や、あ」
 背中を支え、ゆっくりとデスクの上に体を横たえさせれば、髪が散らばってデスクに嫉妬さえする。アルトのすべては自分の体に触れていればいいのにと。
「アルト、これ持ってて。衣装汚しちゃダメだからな」
 そう言って、アルトの両手に裾を持たせる。状況を把握したアルトはぶんぶんと首を振って涙目で羞恥を訴えてくる。
「や、やだ、こんなのっ……」
「こんな格好したまま誘ってきたのは姫だろう?」
「だ、だけど……っ」
 アルトは必死で考えた。こんな恥ずかしい格好できるか、と思って、どうにか脱いでしまう方法を。せめてパニエだけでも取り去ってしまいたい。
「アルト、ほら」
「やだ、こんなん持ってるよりミシェルの背中抱いていたい……っ」
 とすっ。
 少しも痛くない弾丸で撃ち抜かれて、ミハエルが折れざるを得なくなる。
「もう、お前はっ」
 可愛すぎてどうしたらいいか分からない、とミハエルはキスをくれる。
 ちゅ、ちゅ、と音を立てて触れる口唇を、アルトは素直に受け入れた。
「アルト、ちょっと腰上げて、……そう、よっと」
 ミハエルは、汚れないようにゆっくりとパニエとワンピースを取り払っていく。そうする間にも愛撫するように通り過ぎていく指先に、アルトの心臓が鳴った。
「これはこれで……そそるな」
「バ、バカッ……」
「こら、隠さないの」
 アルトの体に残ったのは、太股までを包むニーハイソックスと、形を変えたアルトに押し上げられた女性用の下着。
 こんな格好は二度とお目にかかれないだろうと思うほど、倒錯的で体がうずく。
 羞恥に頬を真っ赤に染め、せめて下着を隠そうとしたアルトの両手を、ミハエルは優しく取り上げた。大丈夫、とその両手に口づけて、下着をずり下げながらアルトを口に含んだ。
「あ、あっ」
 アルトの背がしなる。揺れたつま先は空をかいて、吐息と矯声が混ざっていった。
「あ、だめ、ミシェル、みしぇ……ぁあっ」
 ミハエルの口唇が、舌が、指先が、アルトを丹念に愛撫していく。こんな場所でというのがアルトにも興奮材料になるのか、いつもより敏感なように感じられた。
「ふ……んっ、う……」
 強く吸い上げれば、忍ばせた指がきゅうと締め付けられるのが分かる。押し広げ、撫でこすり、丁寧に突き進んだ。
「ミシェル、ミシェル……っ、も、や、だぁっ……」
 ふる……とアルトが首を振る。ねだる前の仕種だと知っていて、ミハエルはあえてなにもしなかった。
「ミシェル、分かってるくせに……!」
 潤んだ瞳が見上げてくる。分かってはいるが言わせてみたいのだ。こればっかりはどうしようもない、オトコの性。
 じれたアルトは震える体を自分で起こし、ミハエルを引き寄せる。口唇が触れるか触れないかの距離で、訴えた。
「早く、くれよっ……」
 性急な仕種で口づければ、ちゃんと舌を絡め返してくれる。抱き返してもくれる。再びやんわりと押し倒されたすぐあとには彼の重みを感じて、アルトはあられもなく喘いだ。
「あ、あ……ぁっ」
 ミハエルが入り込んでくる感覚は、いつまで経っても慣れるものではない。待ちわびて待ちわびて、ようやく与えられたものであるというのに、快楽は想像を超え、全身を包み込んでいく。
「ミシェル、ミシェルっ……や、っあ!」
「アルト、そんなに……力、入れんなって……な、ほら」
「や、あ、……あぁっ……ん」
 気持ちよくしてやるから、とミハエルはアルトの足を抱え上げる。ソックスに包まれた膝を撫で、わずかに晒された素肌に口づける。
「ん、みしぇる……」
 ミハエルが動くのにつられて、ゆらゆらと揺れる足。重なっていく吐息。体のそこかしこを触れては撫でる、お互いの手のひら。
「ふ、……あ、あっ、やだ、や、も……」
「ね、気持ちいい……? アルト……」
「んっ、よ……すぎてっ……どうにかなる、ばかっ」
 ぺしぺしと背中を叩くアルトにふっと笑って、真っ赤な頬に口づける。溜まった涙を舐め取って、一緒にイこうかと囁いた。
「ミシェ……ル……ぅ」
 アルトはミハエルを抱きしめて、ミハエルはアルトを抱きしめて、同じ時間を共有する。
 呼吸を整える合間にもキスをして、それでまた息が乱れて、仕方ないなあとお互いが笑う。
 ようやく落ち着いたのは、十分以上もそうしておいてから。
「なあ、家に帰ったらもう一度お前を抱いていい?」
「……いつも訊かずにするくせに。バカミシェル」
 肯定と取っておくよと額を合わせ、もう一度、キスをした。




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