Take your hand

2009/09/12


 久しぶりに、二人で街を歩いた。どこへ行こう、と決めたわけでもないが、秋の匂いがする街並みを、この人と感じてみたかった。
 やっぱり、いいな。私服姿。
 美星の制服姿も好きだし、SMSの隊服姿だってイイと思う。パイロットスーツは……そうだな、あの肉体つきがいやらしく見えて、あんまり正視できないんだけど。
 そう考える俺がエロいのか。……いや、いーよな恋人同士なんだし。夜には(たまには夜じゃない時間帯にも)そういうことするわけで、イイ肉体してんなーっていっつも思う。
「なあ、どこ行こうか」
「どこにしよう。映画か? 今なにやってんだろ」
「この間プラネタリウム行ったしなー」
「腹ごしらえ、とか」
 行き先を決めていないデート!って楽しいけれど、逆に行き先が決まらなくて困ることもある。SMSの宿舎で朝メシは食ったけど、午前中の訓練でハラはもう減っている。その提案に乗ってみたはいいものの、
「何食べる?」
 と来たもんだ。お互いを優先しすぎてるんだろうなあ。滅多にできないデートだから、あいつの望みは叶えてやりたいなんて思ったりしちまうんだ。
「前回何食べたっけ?」
「そこらへんのファーストフードだろ。今回こそもう少しちゃんとしたものにしようぜ」
「あんまり高くないものにしてくれよ」
 頬を膨らませながら言い合うけれど、本当はこんなやり取りだって嬉しいんだ。新しい惑星に降り立って、街の建設に引っ張り出されて、以前は休む暇もなかった。忙しくて疲れ果ててイライラして、あいつのことを気遣ってやれずにケンカしたことも何度かあった。
 その度に、……キスして、抱きしめ合って、ごめんて言ってまたキスをする。傷つけたかったわけじゃないんだと続けると、決まって分かってる俺も悪かったって返ってくるんだ。
 そんなこと、何度繰り返したのかな。
「なあ、じゃあ天麩羅屋がいいな。お前あそこのインゲン好きだっただろ?」
「……ハシ使わなきゃなんないよね。ああ、インゲンは好きだけどさ。ねえそこのハンバーガ」
「ダメだ! お前あんなものばっか食ってたら太るだろうが! 絶対身体に良くないんだからな」
「太……その分消費してるぜ。まあ、いいけど。ちょっと歩くぞ、あの店まで」
「いいよ、お前と歩きたい。ダメなんて言わないだろうな」
「まさか。じゃ、行こうか」
 一緒に歩きたいってのは、傍にいたいってのもお互いあるんだろう。でも、たぶんそれだけじゃない。
 ほら、見える範囲のヤツらの7割が、あいつを見てる。
 どうだよ羨ましいだろ。
 恋人の欲目ってヤツを抜いても、あいつの風貌は良い意味で目立つ。振り向かずにはいられないんだ。髪も目も、指先まで全部、見惚れるだろ、分かるよ俺もそうだから。
 けどな、こうして振り向いてくヤツらがいるのは優越感もあって嬉しいって言えば嬉しいんだけど、それもだんだん嫌になってくる。だめだぞ、これは俺のなんだから。そんな羨ましそうな目で見たって、触らせてなんてやらないぜ。
 みんなこいつを見てる。気持ちは分かる。分かるんだけど、その分主張したくなってくる。あああ、だから、これは俺のなんだって。
 見せつける様に、手を伸ばして指を絡めてみた。
「……なんだよ?」
「別に。手ぇ繋ぎたくなっただけ」
 ただ、お前は俺のだって主張したくなっただけ。
 やらないからな、誰にも。


「ちょうど良かった、俺もお前と手ぇ繋ぎたかったんだ」


 こいつは、俺の大事な恋人。