好きっていうより

2013/04/01



やっと捕まえた、と狡噛は宜野座の腕を強く掴む。そうしても逸らされる瞳に、焦りが生まれた。

「なんなんだ、ギノ。朝からずっと、メールも電話も無視して」

お互い部活があると学校にいたにもかかわらず、夕方近い今までコンタクトが取れていなかった。
責めるために声を強くするのに、宜野座からは何も返ってこない。
何かあったのか、自分が何かしてしまったのか。今やっと顔を見られたのに、寂しくてしょうがない。
ギノ、と呼んでも口を引き結ぶばかりでらちが明かない。そっちがその気ならと、両頬を包んで位置を固定し、唇を押し当てた。

「んっ……!?」

驚いた拍子にか弛んだ唇をこじ開けて中に入り込む。

「ん、コウ……っう、ん、んっ…ん……ふ」

誰かに見られたら、と押しやってくる腕も、やがては力を無くしていった。

「…ギノ、話せよ」

それを見計らって唇を離し訊ねる。どうして朝からずっと避けているのかと。
待った狡噛に、宜野座は観念して口を開いたが、それは狡噛の背筋を凍らせた。

「……お前と、話したくなかった、から」

「は!? なんだよそれっ…!?」
「だって今日エイプリルフールだろ!何か言っても…嘘になってしまいそうで」

怖い、と宜野座は俯いて続ける。

「好きって言って逆にとられたくないし、き、嫌いだなんて嘘でも言いたくないし、避けるしかなくて」

今にも泣きそうな彼が視界に入って、目を見開いた。
そんな理由か。
狡噛は、ああと息を吐くように声を上げた。

「なんだ……くそ、マジで嫌われたのかと思ったぞギノ」

狡噛は心の底から安堵して、宜野座を腕の中に収める。照れくささにか身を捩る宜野座をぎゅうと強く抱き締め、

「嘘が嘘で通じるのは午前中だけだ。今はもう時効だろ」
「え、あ、そ、そう……なのか?」

こつんと額を合わせる。至近距離で重なる視線に、宜野座の頬が赤く染まった。

「そうだよ。あと、俺はギノの言うことなら全部信じるから。嘘になるとか変な心配するな」
「…調子のいいことを」
「なんでだ」
「そろそろ離せ」

そろそろ部活の休憩が終わってしまう、と身体を押しやる宜野座を解放する。
本当は触れ合っていたいけど、我慢しよう。

「なあギノ、何か言うことは?」

だけどこれだけは聞いておかねば。朝からどれだけ気を揉んだと思っているのか。

「ああ……ごめん、おはよう、会いたかった、…好き?」

前を歩く宜野座が、指折り数えて告げてくる。本当に悪いと思っているのか疑問だが、仕返しは夜にでもしてやろう。

「おーい、なんで最後の疑問系なんだ」

休憩が終わると言っても、まだ拗ねるくらいの時間はあるはず。

そう、何の気なしに呟いた言葉に、


「いや、もう、愛してるの方が近いかと思って」


振り向いて答えられた時には、ああもう本当に敵わない、と笑ってしまった。