夢で逢えたら

2015/05/28



夢を見た。
俺がギノに抱かれている……いや、これでは語弊があるかもしれん。ギノに抱いてもらっ……違うな、抱きしめてもらっている夢、だ。
夢とは思えないほどリアルだったが、実際には起こり得ない事象だった。

なぜなら、俺もギノも執行官だったからだ。

俺が執行官だった頃アイツは監視官で、あの事件以降執行官になったようだが、そのとき俺はもう公安局から出ちまっている。
だから、執行官のアイツが執行官の俺と同じ空間にいるなんてことはない。夢の中でも、夢だということはしっかり認識していた。
それなのに、どこかで現実だとも思っていた。
ギノに抱かれたら多分こんな感じなんだろうと、根拠もなく納得していたんだ。出逢ってから十数年、そういう意味で触れ合ったことなんてなかったのに。
ずいぶん疲れているようだななんて眉を寄せて、責めるみたいにため息をつくのはギノらしかったが、ああ、うんそうだなと力なく頷いた俺にその腕が伸びてくるとは思わなかった。
「大丈夫か」も「少し休め」もなく、ギノはただ抱き寄せて、肩や腕を撫でてくれる。
シャツ越しに感じる体温や抱いてくれる手のひらの感触、果ては心音までリアルに実感できたんだ。それが気持ちよくて、目を閉じたのを覚えている。
そこでちゃんとした眠りに落ちたんだろう。おかげで今日は頭がすっきりしている。
ギノは元気だろうか。そう考えることができた。
アイツと過ごした長い年月、ああして触れ合うことはなかったが、もし次に逢えたら――今度は俺が抱きしめたい。
アイツが疲れている時に、夢でも逢えたら。





夢を見た。
俺が狡噛を抱いている……いや性的な意味ではなくて、狡噛が俺に抱かれ……、違う。俺が、狡噛を、抱きしめている、夢だ。
やけにリアルだった。長いつきあいではあったが、狡噛を抱きしめたことなんて一度もなかったのに。
でも、そうだ、夢だって分かっていた。俺は確かに今の俺なのに、狡噛は……公安局にいた頃の……執行官の出で立ちだったからな。
アイツが執行官だということは俺は監視官のはずで、実際にはあり得ない時系列。
夢の中でも、ちゃんと夢だと分かっていた。もう執行官ではない狡噛があの姿だったのは、俺が最後に接したものだったからだろう。
今の狡噛がどうしているかなんて、俺には分からない。生きてはいるだろう。昔から狡噛の周りには人が集まるから、独りというわけではないと思う。
だけどひどく疲れた顔をしていた。
眠りが深い方ではなかったと記憶しているが、ちゃんと眠れていないのだろうか?狡噛は俺を相変わらず愛称で呼んだが、それも力なく、どう声をかけていいか分からずに、「大丈夫か」も「少し休め」も言ってやれなかった。
ただ抱き寄せて体を、髪を撫でるくらいしかできなかったんだ。
目を閉じてはくれたから、不快ではなかっただろうが、もう少し気の利いたことをしてやればよかったな。
今どうしているだろう。なぜこんな夢を見たのか分からないが、思いがけない再会は嬉しかった。
執行官の俺が、逃亡犯相手に言えたものではないが、元気でやってくれているといい。もしも疲れているのなら、今度はもう少し長く抱きしめていてやりたい。
また、夢で逢えたら。