手を

2012/12/13


あの日お前の手を掴めなかったことを、今も後悔している。





襟首をつまみ上げられ投げ飛ばされて、ぶつかったドミネーター護送用ドローンが音を立てる。

俺は目を瞠った。
怒りではない。屈辱にでもない。
驚愕にだ。

征陸は気がついている。

しょうのない奴だなとでもいうように笑うあの男は、俺が何を思っていたのか気がついている。
だから諫めて止めたのだと、口唇が震えた。

「……っ」

気づかせた自分に怒りを覚える。
気づかせてしまうほど、まだ強い後悔が残っているのかと。

ああ、忘れてはいない。忘れるべきではない。
あの時アイツをコントロールできていれば、あんな事態にはならなかったんだ。
いまだ互いに夢を見る、三年前の過ち。


「狡噛からです!」


六合塚の声に、ハッと、息を呑んだ。
その後に聞こえた機械を通しての音声に、思わず振り向いた。

『こっちの位置は探知できるな? 現在、コード108が進行中』

至急応援を頼む、と続けられた言葉に、吐き出す息が震えたのが分かる。

――――狡噛。

あの時の悪夢を打ち破ってくれた元相棒の声に、認めたくはないが歓喜に打ち震えた。
あの時とは違うのだと、確かに感じる。
繰り返されるのはS.O.Sだというのに、にわかに奮い立つ体がおかしかった。

「ありったけのドローンを急行させろ!」
「でも、経路が」

狡噛、俺はお前とは違う。お前が見つからないからといって単独で先走るようなことはできん。
だが、自らの無能で部下を死なせるような愚か者は、


「手当たり次第に試せ! 一台でもいいから到着させるんだ!」


あの時のお前と、あの時の俺だけでいい。
あの日の過ちは二度と繰り返さない。誰にも味わわせはしない。

お前を、死なせはしない。



狡噛、今度こそお前の手を掴んでみせる。




お題:リライト様/長文題より
 「あの日君の手を掴めなかったことを、今も後悔している」