2559-2049

2016/05/30




「くそ、動けん……馬鹿、しね」

 布団の上に突っ伏して、申し訳程度にかけられていた羽織をぎゅっと握りしめる。それだけでも、体が悲鳴を上げるようだった。

「……お前さんが言ったンだぜ。俺の言うことなんでも聞くってなァ」

 ヤツが、高杉が、俺のせいじゃないとばかりにふうーと息を吐く。開け放された窓からヤツの吐いた煙が逃げていった。貴様のせいでないわけあるか、どう考えても貴様のせいだ、馬鹿。まあ一割くらいは俺のせいだと思ってやってもいい。
 今回こそは勝てると思ったのだ、高杉に。だが人気投票とやらの結果は、いつも通り高杉の順位が上で、俺が下。一度くらい、俺が上でもいいだろうに。

「うるさい、順位が上だった方の言うことを聞くとは言ったが、こんなものいつもと変わらんだろう」
「どこがだよ。いつもは夜明け前に解放してやってるつもりだが……それに俺ぁ、お前さんを上にもしてやったろう」
「……そういう意味ではない! この破廉恥男が!」

 思わずガバリと体を起こしたが、怠くて痛くて肘ががくりと折れる。不覚にも、高杉に抱き止められてしまった。

「あんまり無茶するもんじゃねーぜ、ヅラ。あんだけやりゃあ、動けねーのも道理ってもんだろ」
「しね、馬鹿」

 ぐいと高杉の体を押しやって悪態をついてやったが、高杉はそれさえも面白そうに笑い受け止めてしまう。
 高杉の言う通りあれだけされたら、動けないのも仕方ない。朝から晩まで、ではなく、晩から昼まで、何度体を重ねたのか。俺が上に乗せられた状態でも、した。ほんとに許さんこの馬鹿。
 ああもう陽が高いではないか。腹も減ってきたし、無理をしてでも起きていようと、散らかされた着物を羽織った。

「まったく、こんな破廉恥な男のどこがいいのか知れん」
「ひでぇ言いようだな、ヅラ。ンなに順位が気になるもんかい」
「一度くらい譲れ。だいたい、貴様が格好いいのが悪いのだ、手酷いと見せかけておいて優しいとかな、人一倍ロマンチストだとかな、そういうのはずるい」

 たまにこうして長くともにいるのなら、説教のひとつでもしてやろうと思ったのだが、……何か間違ったような気がしてならない。
 高杉が目を瞬いて、肩を震わせた。やっぱり間違ったらしい。

「お前さん、面白ぇなあ。本人を前にして惚気かい」
「ち、違うぞ、これは俺が思っていることではなくだな」

 そうだ、別に俺だけが思っていることではないはずだ。そうでなければ高杉の方が上であるわけがない。

「俺からすりゃあ、何位だって構わねぇンだけどな。気になんのは、ただひとり惚れた相手の中での位置だ」

 煙管が置かれ、その手で引き寄せられる。
 何を馬鹿な、俺たちはそういう間柄ではないのだから、俺を抱き寄せる暇があるならその惚れた相手とやらを口説きに行けばいいものを。
 いつもの悪ふざけだ、そうに決まっている。というかこれ以上はせんぞ、絶対にだ。そもそもこっちは体力を根こそぎ持っていかれたのに、なんでそんなに元気なんだ貴様は。
 至近距離での視線の交錯程度で、負けてやると思ったら大間違いだぞ高杉。

「お前さんの中で、俺がどこにいるか、だな」
「ふざけるな貴様なんぞ最下位に決まっているだろう」
「くく、つれねぇな」
「では訊くが、高杉、貴様の中で俺は一位なのか?」
「ンなわけねーだろ」

 ほらみろ、と即答されたことを内心で腹立たしく思いながら、体を押しやろうと、した。
 ぐるりと視界が回る。気がつけば、高杉越しに天井を見上げていた。

「お前さんは、『別格』なんだよ」

 ああ、駄目だ、持っていかれた。体力も、心も、ぜんぶ。


 仕方なく、本当に仕方なく、今回も勝ちは譲ってやって、高杉の背中に腕を回した。


ジャンプ本誌の人気投票順位より。