あんまり上手くはないけれど

2016/12/25



 銀八のデカい手が、俺の頬に触れた。そのまま振り向かされて、ああキスかなって思って、俺は目を閉じる。すぐに触れてきたところを見るに、あんまこらえ性ねーなと内心笑ってしまった。
 まあ、嬉しいンだけど、それは。
 だって、欲情してるってことだろ。銀八が、俺に。
 俺たちには歳の差ってのがある。コイツは大人で、俺はまだガキで。たまにそれがもどかしくて、悔しい思いもしてるけど、「大人」であるこいつが、こうして俺に触れたがってんのは、やっぱり、それだけ好かれてんだなって、分かる。
 さっきだって、あ、愛してるとか言いやがって……ズルイ。どんなクリスマスプレゼントだよ。そんなの、俺が落ちねーわけねーのに。
 つーかなんでキス、触るだけなんだ。もっとがっつけよバーカバーカ。そんなんじゃ、俺……じれったくてしょうがねーよ。

「銀八……」

 いい加減、コイツの出方を待ってんのも面倒になって、体を押しやった。
 もっと深いのがいい。そう思って、自分から口を開けて銀八に食らいついてやった。

「んっ」

 こじ開けて、押し込んで、捕まえる。逃げんな、って睨んでやったら、困ったように笑う瞳とぶつかった。
 なんだ? 困る? キス、困るのか? ……俺、下手、かな……。上手いとは思ってねーけど、下手だとも思ってなかったから、結構落ち込む。
 オトコなんてもちろんコイツが初めてだけど、女はそれなりに知ってた。何人もってわけじゃねーけど、することは一通り。その時なんにも言われなかったけど、もしかしたら……あんまりにも下手過ぎて、言えなかったのかもしれねぇ……。
 どうしたらいいんだ? どうしてやったら、コイツがいちばん喜ぶんだ? 一生懸命やっても、気持ち良くないんなら、いやだ。

「銀八、あの……俺」
「……っは、も、やべーやべー」

 やっぱ無理かなって思って口離したら、銀八がほっぺた赤くしながら首振った。なんだよなにがやべーんだよ、下手さってことかよ。だったらもっとリードしやが――
「あのねお前ね、どこでそういうえっちなちゅーを覚えてくんのよ。誰に仕込まれてんのホント」

 ――れ、ちくしょう。そっちかよ、なんだ、良かった、下手とかそういうんじゃねーんだ……。
 っつーかどう考えても仕込んでんのはてめーだろが。気持ちいいやり方ってのを、俺はてめーに教わったんだぜ。体の芯から熱が上がってきそうなヤツをさ。

「もっかい……」
「だーめ。これ以上は」
「なんで。良かったンならいいじゃねーか」
「こっから先は、ベッド、行こっか」
「え、あ……、……うん」

 別に、ここでもいいんだけど……あーでも背中痛くなんのは嫌かな。俺が上に乗りゃあいいンだけど、銀八がベッドっつってんならそっち行くか。
 手を引かれて、寝室に移動する。
 いまだにどきどきすんのは、そこがいちばん銀八のにおいがするからだ。安心すんのと、そわそわすんのと、どうしようもない期待とが混ざって、銀八の顔をあんまり見られない。

「そーんな緊張しなくても。まだ慣れない?」

 見透かされてる。やっぱり俺、分かりやすいのかな。

「き、緊張なんかしてねーよ。あと、慣れてねーのはしょうがねーだろ、オトコなんて……アンタが最初で、最後なんだから」
「あのねほんっとお前ね、計算してんの? してないの? どっちでもタチ悪いけど」
「な、何がだよわけわかんねーこと言ってねーでさっさと」
「俺をお前の最後にしてね」

 どこがスイッチだったのか分からないまま、押し倒されたベッドの上で、銀八を見上げた。










 高杉の、押し殺した息が聞こえる。それだけでもう危ねーんだけど。
 気持ちいいなら素直に声とか出してほしい派なんだけどね俺ね。コイツに限ってはなんか、我慢してるとこもそそるから困りモンだわ。
 高杉の硬く尖った乳首を、軽く歯で噛んでやると、分かりやすく息が詰まった。可愛いったらない。指先でいじり倒してる方も素直にぷっくり勃っててさ、コリコリしてんの。ホントにこの子、どんだけ俺好みなんだろね。
 まさかこんなに夢中になっちゃうなんて思ってなかった――や、予感くらいはあったけど、まさかここまですっころんで転がり落ちて、いけねーと思いつつ手ぇ出して。ガラにもなく愛してるなんて言っちゃってさ。
 どんだけ俺の全部、持ってくの、ねえ高杉。すんごい悔しいんだけど、こんな年下にさぁ。

「銀八……そこばっか、いやだ……」

 くっそコノヤロ、ほんと計算してんじゃねーだろなぁ! そんなね、涙目で言われたら、イジワルしたくなっちゃうでしょうがあ!
「ん、そこばっかって、どこ? どうされたいの、高杉」

 あからさまにほっぺたが赤くなる。あああごめんね可愛い。俺って好きなコはイジメたいタイプだったのかね、初めて知ったわ。
 分かってるくせに、って睨んでくる高杉が、本当に可愛くてしょうがない。何度かえっちしてるけど、抱くたびに可愛くなってくの、なんでよ。限界はどこなのよ、とまんねーじゃん。

「ここ、やなの? 乳首、すっげーコリコリしてっけど……気持ち良さそうじゃん」
「んんっ……」
「ほら……イイでしょ」

 両方を同時に責めてやると、ふるふるって首振って、耐えてるみたい。あぁ、ほんとくるわ、この顔。
 おでこに浮かぶ汗とか、吐息とか、ほんと可愛いんだけど、いちばんやべーのはあれだ、腰だ。無意識になんだろうけど、押しつけてくんのよ。触ってって、目で、腰で、訴えてくんの。

「ぎ、銀八……っも、焦らすんじゃね……っ」
「あーごめんね泣かないでよ、こっちもしてあげっから」
「泣いてねぇ……!」

 おねだりされて、涙目で睨まれて、腰まで押しつけられたらもうね、我慢できるわけないでしょうが。仕方ないなーなんて大人ヅラして、高杉がつらそうだからなんて建前で、自分の欲望を叶えるために、触った。

「あっ……ン!」

 分かりやすく体が跳ねる。口を飛び出てしまった声が恥ずかしいのか悔しいのか、高杉は口を覆ってしまう。出したくないのは別にいーけど、どうせなら、って思って、キスで塞いだ。こうしてりゃあ声は俺が飲み込める。高杉に触れてもいられる。
 高杉の方も俺の背中に腕なんか回してくれちゃってさ、ぎゅーなんてしてくれちゃってさ。絡める舌もいつもより素直でね。良いことずくめだよ。

「ん、んん……ん、んぁ……っふ」

 可愛い。ほんと可愛い。
 指、入れてもいーかな、あんま余裕ねぇんだよな今日……。
 入れたいそこをとんとん、指先で叩いてみると、高杉の足が揺れた。目蓋を持ち上げると、同じようにそうした高杉と目が合って、潤んだ瞳で、いいよって言われた。気がする。まあ自分に都合のいい解釈ではあるんだけど、当たらずといえども遠からず、だと思う。
 ゆっくりと指を入れて、高杉の反応を見ながら進ませた。

「んん……ん、く……ぁん……」

 指を増やして、かき回して、高杉をほぐしていく。のけぞった高杉を追ってキスをして、舌でかき回す。
 上も、下も、俺でいっぱいになればいい。
 俺だけ見てて、俺だけ抱きしめてて、俺だけ欲しがって。

「ん、銀……八、も……い、からっ……欲しい、アンタの……なあ、くれよ……っ」

 見透かされてる。なんでこんな時だけ勘がいいのかねお前は。お前が欲しがるからなんて言い訳するズルイ俺のこと、お前は許してくれっかな?
「はいはい、ちょーっと力抜いててねー良い子だから」
「ガキ扱い……すんじゃ、ね……っ」

 ガキだとは思ってるよ、実際ね。でもいーんだよ、ほら、俺もガキみてーな恋してんだもんよ、お前に。

「んん……っう……く、あ……ぁッ……」

 苦しそうにのけぞりながらも、ちゃーんと受け入れてくれる、お前に。
 馬鹿みて、こんなにアツくなっちゃって。とまんない、ほんとごめんて思うけど、全然、とまんない。

「やっ、や……あぅ、ん、ん、待っ……馬鹿、もっと……ゆっく、り……!」
「ワリ、とまんねーんだわ、すっげ、エロくなっちゃって……なぁっ」
「あぁっ……あ、いやだ、や……あ、あっ、い……」

 やだって言いながらも、高杉の腕は俺の背中を抱いたまま。それをいいことに体を密着させて、揺さぶって、押し込んで引き戻して、エッロい腰つきと声と音に欲情して、更に激しく動かした。

「銀、八、……っん、あ、あ……!」

 ベッドが啼いてる。高杉が泣いてる。俺も気持ち良すぎて泣きそう。ほんともー勘弁して……。

「あっ、あぅ、うー……、や、いやだ、いや……駄目……いやだ、銀八……っ」
「駄目って、無理、こっちだってとまんねって……言ってんじゃん……ッ」
「イ、きそ……、無理、いく……も、こんな……っや、あぁ……、あ……――!」
「あっ、ちょ、ほんと無理、すげ……いい……ッ」

 高杉の体が震える。肩に爪を立てられるけど、んなこと気にしてられっか、こっちだってイクわ。

「あ、あ……」

 短い呼吸を繰り返して、高杉が余韻に浸っている。もちろん、俺も。あーゴムしてて良かったほんと。抜く暇なかったもんね。
 息を整えながら高杉の髪を撫でると、なんか猫みたいにすり寄ってくる。ほんとあざといなコイツ可愛すぎんでしょうがああああ!
「高杉、ね、ダイジョブ? 痛くなかった?」
「……ったく、ねえ……しぬほど、よかった……」
「……あららそんな可愛いこと言われたらセンセー燃えちゃうわ。もっかいしよ」
「いーけど明日の朝メシてめーのおごりな。どっかモーニング行きてぇ」
「へーえ、朝動ける状態・・・・・ならいいねぇ」
「えっ、ちょ、待っ……」

 待たねーよ。煽ったのお前なんだから。クリスマスのプレゼントにしたって褒美が過ぎる。
 あーでも、他に何もいらねーや。好きって言ってもらった。わざわざあんまんふたつも買ってきてくれた。

 ねえ高杉、さっき言ったのほんとだからね、俺を、お前の最後にして。色恋方面は、俺もあんまり上手くねーけど、ちゃんと大事にすっからさ。
 ……って、しらふの時に言えやって感じね。無理だわこっぱずかしい。
 だからせめて二回目は、ゆっくり優しくしてあげようって思ってた。


 うん、まあ、思ってただけだから。実際できたかどーかはね。
 まあ無理でした! ほんとごめんね、メリークリスマス!!



あんまんとアンタと俺と