華家



Come for me


 ぐっと腰を引き寄せられて、背がしなった。

「あ、……っん」
 二人分の重みを受けて、一人用の椅子が泣き言のように音を立てる。薄暗い図書室の、奥の棚の傍。逢瀬はいつもそこだった。

「テスト、どうだった?」
 まるで何事も起こっていないかのように訊ねてくる年上の男に、マジかこのクソ教師、と心の中で呟いた。
「んっ……た、たぶん、平気……穴埋めは完璧だし、計算も、間違って、ないと、思います……っ」
「完璧、ねぇ……それでこうやって、穴埋められにきたの?」
「サムいです、先生」
「こんな格好してるからかな?」
「あ!」
 貶したのが気に障ったのか、更に奥を突かれて、びくびくと脚が揺れた。脱げかけた制服のズボンが、ついに足から抜けて床に落ちる。空気にさらされた下半身は、確かにこの季節、寒いかもしれない。

「せんせ……やだ……」
「中は、ちゃんと熱いね」
「エロ……、んっ、あ……っていうか、この状況で、あんな、こと、訊かないで、くださいよ、千景先生……」
 ゆさ、と小さく揺さぶられ、じれったい気持ちが這い上がる。この意地の悪い男に、どうしてこんなに惚れてしまったのか。

 卯木千景はこの高校の英語教師だ。そして至は、生徒である。教師と生徒、しかも男同士という禁忌を犯してまでも、千景に犯されたかった。
 何度もアプローチをしかけて、卒業までは駄目だよという千景を強引に押し倒して、抱いてもらったのも、この図書室。図書委員の顧問という立場を最大限に利用させてもらっている。特に今はテスト期間で、委員会も何もない。

「そう……じゃあ、この場にふさわしい質問をしようか? 茅ヶ崎、ここからどうされたい?」
「い……じわるっ」
 千景を受け入れたこの状況で、してほしいことなんかひとつだけなのに。
「これ、もうキツそうだけど、抜いてあげようか。それとも、乳首?」
「や! あっ、あン」
 千景の手が、ニットとシャツをめくり上げてするすると上ってくる。到達した胸の突起は、シャツでこすられて痛いくらいに尖っていた。
「茅ヶ崎は、本当にここ好きだな……ほら、きゅうって締まった」
「いやっ……やだ、先生、痛……あっ、あ」
 千景の指先につままれ、引っ張り上げられる。そこでくりくりとひねってこね回されれば、刺激は快感へと繫がって、千景にダイレクトに伝わってしまう。
「いけない子だ、明日のテスト勉強放って、先生とこんなことしてるなんてね」
「だ、だって、明日、英語とっ、あ……世界史、です、からっ」
「英語は得意科目だもんな。担当教師としては、嬉しい限りだけど」
「ひゃ、あっん……あ、駄目、先生、この体勢、きついぃ……」
 千景が胸に吸いつけば、えぐられる角度が変わる。しなった背を千景の腕に抱き留めてもらっても、支えがそれだけでは心許ない。
 ちゅ、ちゅうっとわざと音を立てながら愛撫される乳首。ずくずくと腰が疼いて、物足りなさに首を振った。
「せんせ……も、やだ、お願い、揺すって」
「もう我慢できないのか? やれやれ、とんだ淫乱に手を出してしまったな」
「こんなのっ、千景先生に、だけ、です!」
「はいはい、そう可愛いこと言ってると――」
 腰を抱えられ、ぐっと引き上げられる。千景が抜けていく感覚が、寂しさと快感で混じる。そのまますぐに引き戻されて、ずっと奥に千景を感じた。
「ああっ……」
「泣きをみることになるけど……って、聞いてないな、茅ヶ崎」
「やっ、やだ、いいから、なんでもっ……先生、気持ち、いい」

 体がどうにかなろうと、動けなくなろうと、どうでもいい。千景に中をめちゃくちゃにされたい。かき回して、突いて、めいっぱい食らわれたい。

 至は千景の肩にすがりついて、自らも腰を揺らす。ギ、ギ、と椅子がきしんで、濡れた音に混ざった。
「はあっ、あ、ア……ん、先生、そこ、もっとして、もっと、あ、やだあっ……」
「ははっ、どっち……ッ」
「千景、せんせ……やだ、いく、イキそ……」
 そう告げれば、千景はいつもキスをしてくれる。声を抑えさせるためだと分かっていても、嬉しくて、至はいつもむさぼるように舌を絡めた。
「んっ、あふ、んん、ん――……!」
 びくびくっと体が痙攣する。膝からつま先までが綺麗な直線になり、どうかすると足の裏がつりそうだが、そんなこと気にしていられない。

「んっ、ん、んあ、あっ……先生駄目、今イッて、る、からっ」
「知るか」
 机の上に体を乗せられて、まだ息も整わないうちに中を行き来される。感度の上がった体内は、千景の形も大きさも覚え、逃がすものかと食らいつく。
「先生、せんせ……っ、だめ、こんな、激しく、されたらっ……また」
 立て続けのセックスにはまだ慣れていない。体力にも自信がないのに、千景は容赦なく突いてくる。淫猥な音が図書室の静寂には不似合いで、それがまた至の羞恥を煽り、さらに理性を剥いでいく。
「待っ、待って先生、やだ、どうにかなる、こんなのっ……あ、あぁッ」
 引き抜かれ、突き戻され、浅く、深く、千景の熱で犯される。
 激しい動きに机は定位置からズレ、椅子は何かの拍子に倒れてガタンと音を立てて床とぶつかっていた。
 だけどそんなもの気にする余裕はやっぱりなくて、全神経が千景へと向かっていく。
「きもち、い、せ、先生、もっ……やだ、いい、そこっ、もっと、強く……!」
「ハッ……どんどんすけべな体になっていくな、茅ヶ崎……っ」
「千景先生のせい、でしょ、せ、責任、取って……!」
 机の上で、あまりの快感に至はのけぞる。まだ終わりたくないのに、責め立てる千景は容赦ない。

「責任、ねぇ……じゃあ」
 千景は笑って、唇の傍まできてくれる。

「Come for me」

 そう囁いて、至の唇を塞いでしまった。
「ん、んん! んっ……」
 揺さぶられ、ずっと奥まで受け入れて、至福の中で至は達する。
 英語が得意科目だと分かっていてあの発言は、そう捉えていいのだろうかと、千景の腰に足を巻き付けた――。



2018/10/13
お題は「椅子」
「Come for me」はちょっと前に話題になってた「俺のためにイッて」っていう懇願と傲慢さがある~てヤツでした。
  
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