華家



休日の過ごし方


 日曜日は好きじゃなかった。
 いや、ある意味好きだったけど、嫌いでもあった。特に夜だ。この時間が終わってしまえば当然次は月曜日が来て、出勤しなければいけない。それが苦痛だった。働きたくない。ゲームだけしていたい。なんとか不労収入で生活したい。
 徹夜でゲームするのもいいんだけど、それで仕事失敗したら大変なことになる。外面だけはいいから、疑われるようなことはないんだけど、約一名だませない相手がいるんだ、今は。
 いや、だませないっていうか、さらけ出しちゃってるっていうか。
 卯木千景は、職場の先輩だ。だから俺の仕事中の姿を知っている。その上、MANKAI寮のルームメイト。つまり寮での俺の姿も知っている。だますのは絶対に無理だ。
 加えて、俺の隣で寝ているこの人は恋人でもあって、そもそもだましたいという感情がない。
 職場での姿も、寮での姿も、ベッドの中の色んなあれも知っていて、全部受け止めてくれる。そんな人いるなんて思わなかった。

 だから最近は、日曜日も好き。

 仕事で疲れて帰る金曜日、体力が残っていればベッド行くけど、忙しい時期は無理になる。体力つけろって怒られるんだよね。解せぬ。
 土曜はゲームを楽しむ日。部屋にこもって好き勝手ゲームしていても、先輩は怒らないし邪魔しない。最近は万里も先輩が部屋にいることに慣れて、以前みたいになった。
 そうして、夜からこの日曜の朝にかけての時間が、俺にとっては至福のひととき。
 ゲーム楽しんで鋭気やしなって、夜は先輩の運転でラブホに向かう。通勤に車使うときは俺が運転するから、先輩の運転するとこ見られるのは嬉しい。やっぱね、俺も免許持ってるのに先輩の運転で出勤すんのは気が引けるしね。
 何より、先輩の運転に見惚れた状態で出勤なんかできるわけない。絶対に顔が緩んでる。

 そんなだから、こんな時間、すごく好き。
 先輩が俺の隣で眠ってくれている。最初にこの寝顔を見たときは、嬉しさで死ぬかと思った。俺も先輩も、他人と深く関わるのが苦手だ。それなのに、無防備に寝顔をさらせる、さらしてくれるっていうのは、劇的な変化だと思う。
 先輩、眼鏡してる時もいいんだけど、眼鏡してなくてもかっこよくてね。正直顔面もチート。マジ腹立つ。
 少し汗に湿った髪が、先輩の額を隠す。俺はそれをそっと撫でて短く息を吐いた。

「先輩、起きてるでしょ」
「うん」

 やっぱり、と呆れれば、ようやく先輩の目が開く。見慣れていてもおかしくないのに、全然慣れない。俺をじっと見つめてくる目に胸が高鳴る。

「おはよう、茅ヶ崎。お前は俺の寝顔眺めるの好きだな、本当に」
「別に」
「ふぅん?」

 否定はするけど、やっぱりごまかせない。事実なんだからしょうがないけど、楽しそうに笑う先輩に腹が立つ。俺だけすごく好きみたいだろ。

「俺は好きだけど。茅ヶ崎が、なんかネコみたいに無意識にすり寄ってくるのも可愛い」

 そうでもなかった。先輩も大概俺のこと好き過ぎだった。

「今日、朝ご飯どうします?」
「お腹減ってる?」
「……ちょっと」
「ああ、そうか、昨夜は少し激しくしすぎたから」
「そういうことを言ってんじゃないんですけど」
「なるほどもっと激しくてもいい、と。了解した」
「そんなことも言ってません!」

 ああ、いやだこの人、絶対に分かっててやってるに違いない。そういうとこが好きなあたり、もう救えないけど。

「シャワーして、どこか食べに行こうか」
「いいんですか? 今日は暇なんですね」
「この間朝までいられなかったこと、根に持ってる?」
「別に」
「……今日はずっと一緒にいられるから、そうむくれるな」

 ぱち、と目を瞬く。そうか、今日は一緒にいられるのか。だったらむくれてる時間が惜しい、さっさとシャワーしよう。体のあちこち痛いけど。

「先輩のおごり?」
「ちゃっかりしてるな。別にいいけど」
「ははっ、おねだり上手って言ってくださいよ。先輩の機嫌がいい内に言質取っとかないと」
「お前ね……。でも、いいな、こういうの」
「え?」
「ゆったりした日曜日、茅ヶ崎とデートするの好きだから」

 さて一緒にシャワーしよう、と先輩がベッドを抜け出す。
 困った。日曜日、もっといっぱい好きになる。



2018/06/23
お題は「日曜日」
  
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