恋の音が聞こえたら

2017/03/20



 新宿、繁華街。
 この街の灯が消えることはあるのだろうかと思うほど、どこかしらに灯りがある賑やかなそこを、都は迷うことなく突き進む。
 たどり着いたのは、雑居ビルの三階部分。「京」というバーだ。
 電飾の施された看板はほんの少しいかがわしさを感じさせるが、店自体はまったく健全な飲み屋だ。合法な酒を、合法に許可されている年齢の相手に出し、相場の金をもらう。ただそれだけの。
「お京さーん」
 都はドアを開けてカウンターの店主に手を振る。お京と呼ばれた店主は都の姿を認め、少しだけ眉を寄せた。
「こら、こんな時間までほっつき歩いて。何かあったらどうするんです、ヤコ」
「…………お京さん俺もう二十四なんだけど……」
 がっくりと項垂れながら、カウンターの奥から二番目に腰をかける。いつもの指定席だ。
「俺から見れば見ればまだ子供ですよ」
「なんでかなーもー、昨日からその台詞聞くの三回目なんだけど!」
 子供扱いされるのが気にくわない、とテーブルに拳を叩きつける都に、お京ははいはいと笑いながら、いつものカクテルを出してくれる。テキーラ少なめのサンライズ。
 どうもここのマスターは、自分を子供扱いしたがる、と都は眉を寄せながらも、そのカクテルで喉を潤した。
「厄介な仕事ですか?」
「あー、……うん、ちょっと」
「ヤコが俺のところに来るのは、そういう時ばっかりですね。たまには普通に飲みに来てくれてもいいのに」
「弱めのヤツばっか出してくるくせに、なに言ってんの。あー、でも、ごめん今回も……力借りたいんだ」
 この店に来てこの席に座るということは、つまりそういうことなのだと暗黙の了解がある。手が行き詰まった時、都は彼に力を貸してもらうことが多々あった。
 いや、都だけではない。上司である春日野だってそうだし、以前は警察の人間と鉢合わせたこともあった。
「構いませんよ、ヤコなら特別料金にしてあげますから」
「それみんなに言ってんじゃないの? 情報屋さん」
「アタリです」
 揶揄する都にも少しも動じないこの男は、いわゆる情報屋だ。
 情報の収集法法は、いささか合法でないこともあるのだが、その正確性は目を瞠るものがある。だからこそ警察機関の人間でさえ、お京から情報を買うのだろう。
 そこで恩を売っておいて、次はその刑事から情報を買うということもあるようで、そこは持ちつ持たれつというヤツなのだ。都が口を出すことではない。
「カテゴリーは殺人。俺が初めてメイン任された依頼なんだけど、よりによって調査対象が殺されたんだ」
 店内にも客はぽつりぽつり。聞かれていい話ではなく、都は声のトーンを落として呟いた。お京が目を瞠って、次いで眉を寄せる。
「メインって……ああもう、ヤコには危険な仕事させるなって、言っておいたのに」
「違う違う、もとは素行調査なんだって。藤吾さんは悪くないから。相手は女性なんだけどね、彼女の経営してるカフェで、今日絞殺体で見つかったんだ。で、ちょうどうちに依頼にきてた人が、被害者と親しかったもんだから、事情聴取一緒に受けて」
 過保護だなと、お京の不機嫌の理由を知った都は、ひとまず否定をしておく。ここで春日野と険悪になられてもあとが面倒なのだ。
「一緒って、どうしてです」
 あ、と都は声を詰まらせた。そこを言う必要はなかったのに、つい口から飛び出てしまった。お京も、耳ざとくそこをすくい上げてくる。
 ごまかすより、正直に話してしまった方がいいかなと、都は少しだけためらって、続けた。
「お互いがアリバイの証人なんだよ。彼女が殺された時間帯、俺その依頼人と一緒だったから。夜ね。ごめんちょっと察して」
「……ヤコ」
「怒んないで、ごめんほんとバカなことしたと思ってるけど、どうしても止まんなかったの」
 お京の目が、ここでいちばん細められ、怒っているのが伝わってくる。
 都の恋愛事情はよく知っていて、なだめてくれるのもアドバイスしてくれるのも、お京だった。
「……つきあってる彼はどうしたの?」
「大丈夫、そこは。依頼人と逢った時には別れてたから。っつーか別れ話した直後だったから、浮気とかそういうのじゃない」
「それは結構。で、依頼人に惚れて、仕事にかこつけて口説いてるわけですか」
「口説けてないよ、お京さんだってウチの規則知ってるくせにっ」
 仕事中は依頼人に手を出したりしない。その規則はお京も知っている。揶揄を含んだお京の意地悪を跳ね返して、都は熱くなった?を押さえた。
「惚れてはいるんですね。ろくな男じゃなかったら、許しませんよ、ヤコ」
「相変わらず過保護……」
「なんとでも。それで? その事件で何が引っかかってるんですか。わざわざ俺のとこにくるなんて」
 お京に口で敵うことはない。試したことはないけど多分体術の方でも敵いそうになくて、都は早々に負けを認めてホールドアップ。
 ハ、と思い出したように顔を上げる。そうだ、ここに来た目的を忘れてはいけない。
「上杉さんがさ、ちょっと……気になるコト言ってたんだよね。凶器」
「凶器? 絞殺ってことなら……犯人のネクタイとか、被害者のエプロンの紐とか」
「パンスト」
「パンストって……被害者のですか?」
「たぶん……でも、上杉さんあの時、またって言いかけたんだ。何でもないって濁してたけど、これもしかして、連続してんじゃないのかなって思って」
 事情聴取の際、都が引っかかったのはそこだ。
 またということは、直近に似たような事件があったはずで、犯人は捕まっていないことが推察される。お京の表情も硬くなり、少し待ってくださいと店の奥に引っ込んでしまう。
 時間にして、二十分、あったかどうか。お京は数枚の紙を手に戻ってくる。
「速すぎ」
「ピックアップしただけです。そこに本命がいるかどうかは分かりませんよ」
 都がその紙を受け取りざっと確認しているうちに、飲んでいた他の客が会計を頼んでくる。お京はマスターの顔に戻り、にこやかに対応し、また来てくださいねとお決まりの文句で、三組の客を見送った。
「お店クローズにしてきたんで、声抑えなくても大丈夫ですよ、ヤコ」
「えっ、この時間帯ってかき入れ時なんじゃないの」
「俺の店は気まぐれなので」
「それは分かる」
 店の看板を下げてきたらしく、お京はそう言って都の隣に腰掛ける。申し訳ないという思いと、力強いなと思う感情がごちゃ混ぜになって、都は口の端を上げた。
「上杉さんの管轄にしぼろうかとも思ったんですが、そうすると見落とすかもしれないので、ここ三か月くらいのですが、東京近辺で起きた事件を集めました。男女、年齢問わず」
 お京の言う通り、その紙には日時と場所、被害者の年齢性別、事件の概要が記載されている。この短時間にまとめてきたということは、起きた事件を日々収集しているのだろう。まったく頭の下がる思いである。
「またって言うからには、女性、ですかね、被害者……レイプ殺人?」
「うーん、そうなるよねえ、可能性としては」
 凶器がパンストというのだから、被害女性が身につけていたものだと考えるのが自然だ。
 乱暴されていることを考えると当然犯人は男で、計画的な犯行、もしくは衝動的な欲で起こしてしまった可能性が高い。
 標的を物色していたのならば、不審者の通報がないだろうか、とお京は店の奥から小さな端末を持ってくる。
 何度見ても、何をしているのか分からない作業を、横目で見守りながら、都はピックアップされた事件を整頓していく。
「やな感じだよねえ、こんな事件ばっかりさあ」
「そうですね。ヤコにはもっと普通の仕事してもらいたかったんですけど」
「んー、でも今この仕事やってんの楽しいよ。わんこの散歩とかさ、お年寄りんとこの掃除とかね。この間、おばあちゃんにお菓子もらっちゃった。美味しかったよ」
「楽しんでるなら、まぁ……いいですけどね」
「俺はもう大丈夫だから、お京さん」
 責めるつもりも、止めるつもりもない、諭すつもりも毛頭なくて、ただお京への感謝ばかりで、都はゆっくりと音にする。都の事情をすべて知っている、数少ない人物だ。
「それでも俺は、心配することはやめませんからね。あと、変な男に引っかからないように」
 釘を刺されて、都は肩を揺らして笑う。思い浮かんだのは、やはり今回の依頼人である彼だけれど、どうにも一方通行だしなと、音にはせずに考えた。
「あれ、……ん?」
 そうして四枚目の紙をめくった時、ふと違和感。いや、既視感。
「どうしました、ヤコ」
「ん、いや……この並び……どっかで」
 紙に書かれた被害者の名前。
 岩城孝、冴島健二、室伏充。
 都はその四枚目をじっと眺めて、何度も読み返す。絞殺体なのは今回の事件と同じ、凶器はここには書かれていない。が、どうしてか気にかかる。
 ハッとした。
 都はカバンの中から今回の依頼ファイルを取り出し、プリントアウトした写真を確認する。
「あっ……た、これ」
 それは手帳の数ページ。書かれた名前の一文字が、この三人の被害者と一致するのだ。
 岩、冴、室。
 どれも珍しい名前ではないが、これを偶然として片付けるのは難しい。
 彼女と?がりがあったかもしれない男たちが、ここ一か月で次々に殺されているなんて。
「痴情のもつれですか……」
「んー、金の流れがあったかもだしね。もしくは彼女に本気だっヤツが、他の相手を、って感じ?」
 だけど、とお京はプリントアウトした手帳の写真を指さして、訊ねた。
「金銭トラブルにしても、恋愛感情云々にしても、誰ですか? この手帳に書いてある三人、もう死んでますよ」
 はたと都も気がつく。手帳に書かれた名前は三つ。死んだ男も三人。手帳とその男たちが結びつくなら、彼女を含めて全員が死んでいる。この手帳に書いた以外にも相手がいるならば、突き止めるのは難しい。
 電話でのやりとりにしろ、メールにしろ、それはすでに警察が確認しているだろう。連続殺人という可能性がある以上、見逃しているはずもない。
 都はがっくりと肩を落とした。
「やっぱ難しいのかなー、本職じゃねーと」
「まぁまぁ、そうがっかりしなくても。逆に、ここに書かれていなかった相手が、もしかしたら本命だったのかもしれないですし」
「……え? なんで?」
 きょとんと首を傾げる。なぜ本命と逢う予定が書かれていないのか。
 恋人だったのなら、それこそデートの予定など嬉しいものに決まっているのに。
「ただのウリの相手と、心から愛している人を、一緒に書きたいものですか? まあ、本命がいるのに他の男というのがそもそも俺には理解できませんが……あとは、そうですね、ここに書いたらまずい相手、とか」
 お京も唸りながら可能性を音にしていく。
 お京自身、バーで多くの客を相手にしてはいるが、それはあくまでも客とマスターというだけだ。
 たまに本気で言い寄ってくる相手もいるようだが、そこはきっちりと線を引いているらしい。
 都は、瞬きひとつ。
 大事なことを忘れていた。
「そうだ……、彼女、好きな人がいたみたいなんだよね。その人とは結婚できないからって、ウチの依頼人と形だけ結婚してたんだ……」
「なら、その依頼人てことは……ああ、でもアリバイがあるんでしたっけ。ヤコの記憶が確かなら、ね」
「どういう意味?」
「ホテルから現場まで、どれくらいですか? 少し下世話な話をしますが、ベッドであなたを気絶するまで抱いて、犯行時刻もベッドに一緒にいたと錯覚させるのは、簡単ですよ」
 睡眠薬だとすぐバレますけどね、とお京がつけ加えてくる。
 都は目を瞠った。
 支倉がホテルを抜け出して、彼女を殺し、何食わぬ顔でホテルに戻り、あんなキスをして、彼女の素行調査を依頼してきたと言うのか。
「違う。絶対」
 都は、お京の導き出した可能性を否定する。確かに、可能性としては考えられた。
 あんなことをやっていた理由を聞く前に衝動的に犯行に及び、真実を求めて依頼をしてきたということも、充分にあり得る。
 都は彼のアリバイを証明したが、時刻は支倉の言った時刻をそのまま信用しただけだ。
 だけど、
「あの人じゃない。上杉さんから電話かかってきたとき、ほんとに魂抜けたんじゃないかってくらい、放心してた。犯人なら、あんな風にはならないよ」
 だから絶対に違う、と続ける。お京の目をまっすぐ見つめると、彼は呆れたように目を伏せた。
「あなたがそこまで信用してるなら、いいですけど。俺はその相手について何も知らないから言ってるだけで。すみません、ヤコ」
「え、あ、うん、別に、いいけど……お京さんは、可能性を言ってくれただけだし」
「でも、その依頼人には心当たりないんですか? 彼女のお相手について」
「そこが面倒なとこでさ。あの人ら結婚してたくせに相手のプライベートは何も知らないらしくて。まだ家族とかの方が知っ……」
 あ、と気づく。そういえば彼女には弟がいると言っていた。
 姉の死はもう知らされているだろうが、話を聞ける状態なら、一度逢ってみたい。数年しか一緒にいなかった支倉よりは、よほど彼女のことを知っているだろう。恋愛遍歴などは期待していないが、彼女の人となりくらいは。
「お京さん、被害者の弟の住所とか、分かるかな」
「弟? 実家でないなら、少し時間がかかると思いますが……」
 お願い、と都は胸の前で手を合わせる。お京はやれやれといった風に肩を竦めた。
 その時、聞き慣れた呼び出し音。都の携帯端末だ。
「あれ、誰だろ。あ、違うや仕事用の方だ」
 私用の携帯端末を持ち上げてみるも、着信している様子はない。支給されている、仕事用の方だ。
「えっ……なんで」
 慌ててカバンを探り取り出すと、着信画面に支倉の名前が浮かんでいた。都は即座に通話をタップする。
「も、もしもし、どうしたの?」
『いや、あれから思い出して、探してみたんだ。義弟……ああ、もう元だが、彼の住所とか』
「えっ、あるの!? 今ちょうど調べようとしてたとこなんだよね」
 端末を通して、支倉の声が聞こえる。事件の進展に?がりそうなことなのに、不謹慎にも都の心臓は別の意味で跳ねる。
 声を聞いただけで、こんなにも胸が熱いなんて。
 ――――ほんと、落ちたあとって早いんだよね俺……。
「ちょっと待って、メモ……」
『写真も見つけたが、これもあった方がいいだろうか』
「え、あー、うん、そりゃ……顔分かる方が。あの、明日って」
 明日逢えるかと訊ねかけて、明日も平日なことに気がつく。つまり仕事があるだろうことは、すぐに分かる。できれば早く知りたいが、可能なら昼休みにでも逢えないだろうか。
『今から逢えるか?』
「えっ、今!?」
 都は驚いた。別れたとはいえ元妻が殺されて、心に傷を負っただろう依頼人に、無茶を言うわけにもいかないと思っていたのに、向こうから打ち消される。
 そりゃあ情報は早い方がいいし、明日も朝から調査にでかけることができる。
「あの、そっちが構わないなら……」
『今どこに?』
「いや、俺がそっちに」
「ヤコ、ここ来てもらったらどうですか? 調べ物するなら、俺がやりますから」
 事態を察したのか、お京が小さく口を出してくる。
 確かに、弟の住所が分かったとして、そこから何かを調べるとしたら、慣れているお京にやってもらうのがいちばん速い。
「いいの? ありがとう。あ、うんごめんあのさ、新宿まで来られる? 住所言うから」
 そうして都は支倉に店の場所を説明し、気をつけてと通話を切った。店自体はクローズになっているが入れるからと、つけ加えて。
「すぐに来るって。ごめんねお京さん」
「いいですよ。俺もヤコを骨抜きにしたって人を、見てみたかったし」
「そっち目当て!?」
 思わず声を上げた都に、お京は肩を震わせて笑う。からかって遊んでいるのだろうと分かっていても、釈然としなかった。
 ともかく支倉が来るまでに、もう少し被害者たちのことを確認しようと、お京は端末のキーを叩く。都は三人の男に共通しているところがないかと、じっと紙を眺める。
「この三人……みんな同い年……あ、違うや、岩城だけ生まれ年違う」
「学年的には同じなんじゃないですか?」
「あ、そっか。二月だ。ってことは、学校とかで?がってないかな」
 この短期間に、梶谷洋子に近づいた三人の男。もともと知り合いだった可能性はないだろうかと、都たちは掘り下げていく。
 出身地は違う。勤め先も違う。となると、あとは学校での?がりなのだが、小中高とどれも違う。ただ、岩城と室伏は大学が同じ。そこから冴島と出逢う可能性はいくらでもある。例えばゼミやバイト先など、同学年ならば話も合うだろう。
「明日から、この三人周辺で聞き込みしてみる」
 ものすごい進展だ、と都の目が輝き出したところで、店のドアが開く音がした。
 支倉がもう到着したのかと、そちらを振り向くと、予想通り支倉と、予想外にもう一人。
「あれっ、どしたの藤吾さん」
 都の上司である春日野藤吾だ。仕事を片付けてきたのだろう。
「久々に、お京ちゃんのカクテル飲みたいなと思って。閉まってたけど大丈夫? ちょうどそこで支倉氏と逢ったんだけど」
「あ、うん、支倉さんは俺らが呼んだっていうか……ごめんわざわざ来てもらって、……って、どうしたの」
 春日野の後ろで、支倉がただ一点を見つめて硬直しているのに気がついた。声をかけるけれど、耳には入っていないようだ。
「何が久々ですか。つい先週来たばっか、り……」
 お京がカウンターに戻りかけて、支倉と同じように硬直する。お京の視線も、ただ一点を見つめていた。
「……京一郎……」
「陽平……?」
 支倉がお京の――京一郎の名を呼ぶ。京一郎が支倉の名を呼ぶ。
 え? と都は目を瞠った。
 ――――なにこれ。
 支倉を見やり、京一郎を見やる。お互いに驚いているようだが、見知った相手なのは間違いなさそうだった。
「え、あれ、あの、支倉さん、お京さんと、知り合い?」
 都の問いかけに、京一郎がハッと振り向いてくる。一瞬よぎった可能性を、そのバツが悪そうな表情が色濃くしてくれた。
「あ、ああ……高校の同級生なんです。びっくりした」
「そ、……そうなんだ、すごい偶然」
 ツキンと、都の心臓が痛む。
 ――――まさか。
 二人の、お互いを視界に認めた瞬間の動揺。ただの同級生だった相手を前にして、あんな風になるものだろうか。
 だが京一郎が何も言わないのならば、それを信じるしかない。
「えっ……ちょっと待ってください、じゃあ、ヤコの言ってた依頼人て」
「……支倉さんだよ。まさかお京さんの友達だとは思わなかったけど」
「へぇ、ほんとにすごい偶然だね。お京ちゃんの高校時代って、どんなんだったんだろ。聞いてみたいな」
「何を馬鹿なこと言ってるんです。別に普通ですよ、ねぇ陽平」
 ともかく座って、と話題を逸らすように、京一郎が春日野と支倉に椅子を勧める。
 都の隣に支倉、その隣に春日野。京一郎はカウンターの中で、二人にカクテルを作り始めた。

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