理由

2011/01/16



 そのゼロ時間は、いつもと違っていた。



「ス、スガタ……?」

 タクトは目を見開いた。タウバーンの前で、敵のサイバディどころか十字団幹部のすべてが、彼に向かって跪いている。
 彼――シンドウ・スガタに。


「ザメクの発動が可能となりました、代表」

 ヘッドの静かな声が聞こえる。ワコは、同じ球体の中にいるスガタをゆっくりと振り向いた。

「ス、スガタくんどういうこと!? なんであの人たち…っ」
「ワコ、どいてくれ」
「きゃ……」

 ぐ、と肩を押されて、球体が分裂する。押し出されたような形のワコは、タウバーンの手に受け止められた。

「ワコ! ……スガタどういうことだ!」

 ワコを受け止めたタクトはスガタを振り仰ぐ。そこには、彼の背中しかなかった。

「言わなきゃ分からないほど馬鹿でもないだろう。僕は綺羅星十字団第一隊エンペラー代表…ザメクのスタードライバーだ」

 少しだけ振り向いたスガタの視線が突き刺さる。伊達や酔狂ではない、スガタの本気だ。

「スガタ…っ……」

 タクトの、しぼり出すような声がゼロ時間に響く。

「……泣かせるねえ。君は僕の思ったとおりの少年だよ」
「何の話しだ」
「我々はどんどんフェーズを上げていく。いくら銀河美少年とはいえ、いつまでも勝ち通せるはずもない。だけど君が彼と対峙していれば、少なくとも彼が死ぬことはないよね」

 ヘッドはスガタの正面で、そう言って口の端を上げてみせる。
 視線の交錯と沈黙。破ったのはスガタだった。

「入団の理由は問わず…だったはずだけど?」
「問わないよ。ただザメクのスタードライバーがいればそれでいい。それが君で、俺は嬉しいけどね」
「食えない男だな。だが邪魔はするなよ、あれは…僕でなければ相手ができん」
「御心のままに」

 忠誠を誓う礼をし、ヘッドは幹部一同を下がらせる。
 そこでようやくスガタは、タクトを……銀河美少年を振り向いた。

「スガタ…」
「お前と出逢った時から、こうなることは分かっていたような気がする」
「スガタッ……」


 ――お前を死なせたくはない、タクト。


「さあタクト、僕を幻滅させてくれるなよ」

 かたかたと、タクトの口唇が震える。
 以前対峙したときとは状況が全然違う。本当に敵同士として、向かい合わなければならないのだ。
 ふるふると首を振る。
 ワコが泣き叫んでいるのが分かるのに、どうすることもできない。
 スガタを止めたいのに、何もできない。

「スガタァ……っ」

 彼のシルシが青く光る。こんな時でさえ美しいと感じる、スガタの光。
 溢れそうになる嗚咽をこらえたら、ひとつの雫がこぼれ落ちた。


「アプリボワゼ――――ザメク!!」


 ゼロ時間の空間が、青白い光に包まれる。



「スガタアアァァアアァァ――――!!!!」



 できうる限りに叫んだ声と伸ばしたタクトの腕は、スガタにはもう、届かなかった。